第4章 或る爆弾
「どうかしたかい?」
「えっ!いや、あの。」
慌てて手をバタバタさせる。
「先刻、全く同じ台詞を太宰さんが云っていたものだから。」
「ああ、そうだったか。でも、私も太宰だからね。善く有ることだよ。」
「そうなんですね……」
ふふふと笑いながら云った紬に相槌を打つ。
いくら双子と言っても、台詞まで被ったりするかな?
それに―――……
敦の頭に疑問が過る。そして横目で、もう片割れを見る。
本当にそっくりだけど、とても兄妹とは思えないっ!
国木田と太宰の取っ組み合いを呆れ眼で観る。
そして引っ掛かっていた言葉を口にする。
「あの……「非常事態」って?」
「そうだった!探偵社に来い!人手が要る!」
ハッと思い出した様に慌て出す。
「何で?」
太宰が国木田と紬を交互に見る。
「爆弾魔が」
目を伏せる国木田。
「人質つれて探偵社に立て籠ったのだよ」
紬は眉を寄せて、続きを兄に告げた。
―――
「嫌だァ……もう嫌だ………」
爆弾魔は震えながら窓際の机に座り此方を威嚇している。
「ぜんぶお前等の所為だ……『武装探偵社』が悪いンだ!」
足元に居るのは人質だろう。
学生服を纏った女性が、口には布を噛まされ、手は腰に巻かれたロープで拘束された状態で青褪めた顔をして此方を見ている。
「社長は何処だ!早く出せ!出ないと――」
爆弾魔の男は、人質の女性の肩を引き寄せ、叫んだ。
「爆弾で皆吹っ飛んで死ンじゃうよ!」
その様子を探偵社の物陰から窺う太宰兄妹と国木田。
「あちゃー」
「怨恨だ」
国木田が手帳を視ながら太宰に云う。
「犯人は探偵社に恨みがあって社長に会わせないと爆破するぞ と」
「先刻からその事ばかり云っているからね。余程のようだよ。」
太宰の推察に紬がコクリと頷き、補足する。
「ウチは色んな処から恨み買うからねぇ」
太宰が物陰から犯人の足元に或る爆弾を確認する。
「……うん。あれ高性能爆薬だ。この部屋くらいは軽く吹き飛んじゃうね」
「矢張り、誰が見てもそうだよね」
紬は溜め息をつく。
「爆弾に何か被せて爆風を押さえるって手もあるけど……この状況じゃなぁ」
この案はお手上げ と言わんばかりに手を広げる太宰。
「どうする?」