第34章 共喰い 其の肆
市内病院―――
「それで谷崎君、社長の行方は?」
真っ白な部屋。
点滴が繋がれた身体を起こし、太宰は電話をしていた。
『それが……総出で捜しても手掛かりすら……』
「だろうね。社長は私達が到着し得ない場所を選んだ筈だ。居場所が判るとすれば嘗ての二人の関係者だが……私に異能無効化が無ければ与謝野女医に治療して貰って一緒に捜すんだけどね」
撃たれた腹部をギュッ…と掴みながら太宰は話し、電話を少し耳から離す。
「こう云う時……彼の人なら如何するかな」
窓の外を眺め、呟くように云う。
そして、何かを思い出して谷崎に聞いた。
「そういえば紬は?何か掴んでないの?」
『えッ…!』
「え?」
谷崎の反応に首を傾げる。
『紬さん……太宰さんの所に居るンじャないンですか?』
「!?」
谷崎の言葉に、一瞬で顔を強張らせる。
紬が居ない―――!?
否、そうだ。
乱歩さんと紬が居れば
少なくともマフィアに遅れは取らなかった筈だ。
ならば紬は一体、何処で何を―――………
太宰の思考が、紬の事を考える為に動き出す。
そして、思い返すのは最後に見た紬の顔。
真逆……あの時、既に………!?
様子が可笑しかった理由の仮説が頭を霞める。
より確かなものに!
そう考えて頭を回転させようとしたときだ。
ピシャ!!
勢いよく病室の扉が開いたかと思えば
「太宰さん!手術後は絶対安静と云ったでしょう!それに院内は通話禁止です!」
凄い勢いでナースが怒鳴りながら入室してくる。
「えぇ?他の医師の許可は取ったし……それに人命の懸かった話ですよ?」
「規則は規則です!」
パシッ!と、これまた凄い勢いで太宰の携帯電話を取り上げた。
重大な話を電話でしていた事も。
大切な人の事について考えていた事も。
凡て邪魔されて不機嫌な顔を作る太宰。
そして――――。