第4章 或る爆弾
「もう何でもいいから勝ちたい。」
国木田が項垂れながら云う。
女性給仕が蓋つきの皿を運んでくる。
「でも――そう云えば太宰さん達、ボクの次に小さい『3』と『5』の数字を引いたせいで、当日新人君を連れてくる役をする羽目になっちゃいましたけど。」
「というか、紬が兄と連番を引くとは……。」
「兄の手伝いをしたいと思うのが妹心だよ。」
「……どうやった?」
「うふふ、秘密。」
満面な笑みで答える紬。
完全なる如何様の様だ。
「はて。そう云えば先刻の女性給仕さん、どこかで見たような―――」
太宰が皿の蓋を開く。
同時に、かちりと音がした。
「………ん……?」
蓋の下に在ったのは料理ではなく、奇妙に入り組んだ機械と粘土状の個体燃料。
それと、太宰の手がもつ蓋が細引で繋がっている。
『矢張リ、ワタシダケヲ視テ。』
不気味な一言が書かれた紙がハラリと落ちる。
「…………あー、これは、あれかな……?蓋を動かしたら、ドカン、って奴かな………?」
笑顔のまま凍り付いた表情で、同僚のほうに視線を向ける。
が。
「あれ……?谷崎君?国木田君?」
いつの間にか、二人は居なくなっていた。
「………紬」
「どうにでもなるけど、どうもしないよ?」
笑顔で太宰を見ている紬。国木田達に去るように促されたが、残って太宰の向かいに座っている。
「……あー…………………………………………ぎゃふん」
「ふふふ、国木田君より先に女性給仕に云わされるなんてねー。」
店員も、事態に気付いた客も取り敢えず店を出たようだ。
故に、のんびりと食事をしながら酒を飲んでいるのは紬だけになった。
「……紬。私はいつまでこうしていればいいんだい?」
「別に私はそのポーズを強要などしていないさ。疲れたなら降ろせばいいだろう?」
「……爆発したら?」
太宰の言葉にニッコリ笑い
「その時は一緒に死ねる。本望ではないか。」
アッサリと言ったときだった。
「貴女誰?…何故…一緒に」
ぬっ、と出てきたのはこの皿を運んできた女性給仕だった。
やっと出てきたか。
「やあ。随分過激な自己主張をするね。どんな女性か会ってみたかったのだよ」
紬は質問してきた女性に笑顔を返した。