第4章 或る爆弾
「お前は自由すぎだ!今日もこんな時間になってから顔を見せおって……今日は仕事をサボって何をしていた!どうせどこぞで誰かに迷惑を掛けていたのだろう!後で謝罪と後始末をするのは誰だと思っているのだ!」
「誰って……勿論そんなの決まっ」
「云わせるか!」
国木田が太宰の首を捻る。ポキッと云う軽やかな音を立て、
「………。」
太宰は幸せそうな顔をする。
それを見ていた紬は不満そうだ。
「まあまあ。もし謝罪と後始末が必要なら私が行くよ。」
「何!?」
国木田が太宰の首を離す。
「「………。」」
兄妹は睨み合って視線を外した。
―――
「思い出したぞ。太宰、貴様、あの小僧はどうした」
「小僧?」
「昨日拾った宿なしの小僧だ」
敦の事を云っているらしい。
「実は今日は、その用で来たのだよ。いや楽しみだねえ。」
「俺は反対だ。どうしてもと云うならば社長に掛け合え。社長が認めるならば俺からは何も云わん。」
「もう掛け合ったよ。入社試験の内容を考えろってさ。」
太宰は笑顔で云った。
―――
入社試験を考える会議は悲惨な状況だった。
何を試験とするのかから始まり、誰が何を行うのかで終わる筈だったのだが。
中々決まらなかった。
やっと決まった頃には『深夜帯』と呼ばれるほどの時間だった。
「納得いかん!」
深夜まで営業している居酒屋で国木田は叫んだ。
結局、敦の入社試験では『爆弾魔』の立て籠り事件を解決出来るか否かで決まった。
国木田が不満を述べているのはその役者決めの事だ。
「それにしても、全部バレていたとは……」
炭酸飲料を飲みながら太宰に云う谷崎。
「うふふ、悪巧みの年季が違うよ。」
と笑って酒を飲む太宰。
籤で『爆弾魔』の役決めをする際に、国木田と谷崎が如何様をして太宰に押し付けるよう仕込んでいたのだ。
「私に相談してくれていれば力になったのにねえ。」
紬も太宰と同じ酒を煽る。
「…お前は太宰と一緒に居るから信用できない。」
「うふふ。賢明な判断ではないよ。だから、治に手を貸す羽目になった。」
「「!」」
太宰兄だけではなく妹も、か。
「悪巧みの悪質さなら紬の方が上だからね。」
「照れるね。」
何なんだ、この兄妹は。
二人は突っ込む言葉が出なかった。