第31章 仮面ノ暗殺者
「此処が社長が襲われた路地裏か……」
「……。」
双りは並んで現場に着いた。
路地の中に入っていき、目的のものを見つけたのか太宰が止まる。
「社長が最初に見た血溜まりだね」
血の跡を指で擦り、太宰は目を閉じる。
「謎の血溜まり 行き止まりからの攻撃 宙を踏んで歩く異能……成る程ね」
その瞼の裏には自らの推理を映像化しているのだろう。
「犯人が判った」
答えに行き着いた太宰が呟いた。
そんな兄の背中を見ながらも紬は一言も話さない。
漸く、屈んでいた太宰が立ち上がり紬の方を向いた。
「知っていたね?この事を」
「だったら何だっていうんだい?」
「……。」
否定せずに答えた紬に鋭い視線を送る。
「私の方が答えに行き着くのが早かった……それだけだろう?」
「……その切っ掛けについて話す気はない、と」
「今はね………だって」
フイッと顔を背けて紬は云う。
「今、決めた考えを…変える気は無いのだろう?」
「……。」
今度は紬の問いに太宰が黙る。
その沈黙を肯定と受け取った紬はくるりと方向転換をした。
「何処行くの」
「さあ?取り敢えず今は治の傍に居る気はない」
「……。」
それだけ言い残して紬は太宰の元を去っていったのだった。
何時もなら絶対に制止する太宰もそれをせずに電話を取り出した。
「もしもし国木田君?――――」
用件を云うだけ云って太宰もその場から離れた。
向かう先の方から爆発音が聴こえる。
「……。」
歩みを止めて少し考えて。
細路地の中に入っていった。
そして突き当たり―――。
積まれた木箱を見て、確信する。
その中にあったモノを手にとって太宰は呟いた。
「紬の事も、これくらい判ればいいのに」
はぁ、と溜め息を着く。