第31章 仮面ノ暗殺者
たった数時間の聞き込みだけでこれほどの情報まで持っていける太宰兄妹に敦は唯唯感心する事しかできなかった。
「国木田君。社長が襲われた場所を教えて」
「あと状況も」
太宰兄妹に必要な情報を渡す。
それを一通り聞き終えて太宰は紬の方を向いた。
「行くよ紬」
「……。」
返事を聞く事なく紬の手を引く太宰。
こうして双子は社長襲撃の現場へと向かったのだった。
「紬さん……何か様子が可笑しかったですね」
パタンと閉まった扉を見て、敦が先程から聞けなかった疑問を漸く口にした。
「太宰の奴が何も云わずに連れてるってことは理由でもあるんだろう」
「そうですね。体調不良とかじゃなければいいですけど」
「……。」
体調不良でもないことは国木田には判っていた。
国木田は以前一度だけ。
紬のあの表情を見ているのだ。
具合が悪いとするなら太宰の方だろう……。
何時のことだったか。
監禁されて暴行を受けた上に、髪まで切られた兄を捜しにきた時の紬の表情と全く同じ…。
「あの双子の事は、あの双子にしか解らん。それよりも今は社長襲撃の件だ」
「そうですね」
国木田の言葉で、敦も業務に戻ったのであった。