第4章 或る爆弾
探偵社の事務所が入っている建物の1階にある喫茶店
『うずまき』
其処で、谷崎と国木田が何か話している
「治の話をしている顔をしているよ国木田君。」
「なに?紬は最近、国木田君に矢鱈と興味津々ではないか。気があるの?許さないけど。」
様子を入り口から眺めている太宰兄妹。
「治の女癖の悪さに比べたら大したことしていない筈なのだがね。」
「私も紬に咎められる程の事はしていないさ。」
「そりゃそうだ。私は結婚さえしなければ孕ませようと何しようと咎めたりしてないからね。連絡したときに出なければ赦さないけど。」
知っているよ、その位。と溜め息をつく太宰。
「兎に角、私は他の男と触れ合うどころか二人で出歩くのさえ認めないから。」
鋭い目で睨まれて、理不尽だねえと肩をすくめる妹の紬。
2人で入店する。
「む……?何だ、急に照明の具合が悪く……?」
国木田の言葉に谷崎が照明を見上げた。しかし蛍光灯には何の異常もない。
「それは私の合図さ~♪」
紬の隣で太宰が唄う。
「うわあああ!」
国木田の椅子ががたがたと騒々しい音を立てた。
「いやあ、いつ聞いても国木田君の悲鳴は素敵だねえ。その反応、寿命が縮まっていくのが肉眼で見えるかのようだよ。あ、おばちゃん、いつもの紅茶ね。」
店の奥から中年の女性店主が顔を出し、あら太宰ちゃん、今日もいい男だねと声を掛ける。
「おや?」
「初めまして。いつも兄がお世話になってます。」
おばちゃんの眼が紬の姿を捉える。
「あらー。太宰ちゃんの妹さん?太宰ちゃんにそっくりのいい女ねー!」
「いやいや、おばちゃんには敵いませんよ。私も治と同じ紅茶を頂けます?」
あらー上手ねーと云いながら引っ込む。
国木田の隣に太宰が、谷崎の隣に紬が座る。
「太宰……お前、何をしに来た?」
「え?それは勿論、国木田君の寿命を軽く縮めに」
「お前はっ!どれだけ俺に苦労を掛ければっ!」
太宰の首を絞めながら騒ぐ国木田達を慌てて止める谷崎。
しかし周りの客も店員も暖かい目で二人のやり取りを見ている。
「苦労するねぇー谷崎くんも。」
「紬さんも手伝ってくださいよ~…」
ふふふと笑いながら傍観している紬に項垂れる谷崎。