第30章 Addict
車が混乱する道路の間を抜けて。
3人は漸く花袋たちに追い付いたのだった。
丁度―――
何やらワタワタとしている『撫子』の正体を樋口が暴いた直後だったらしい。
『撫子』は遅れてやって来た紬を見て反応する。
「あっ……!」
「やぁ、銀ちゃん久しぶりー随分と美人になったねぇ」
「「!?」」
紬のにこやかな挨拶にバッ!と全員が注目したのは云うまでもない。
国木田は先程、愉しそうにした紬の真意に気付きギギギギギ…と音が聴こえるほどぎこちなく首を動かして紬に云った。
「紬……貴様……識っていたな?」
「真逆ー国木田君。私がマフィアである銀ちゃんの行動なんて知っていた訳無いでしょ」
フフン、と胸を張って堂々と答える紬。
「ほぉ……と云うことは『誰か』は識っていたというわけだな?」
「……あれ。今日の国木田君は冴えてる……」
紬の首を締め上げながらガクガクと揺さぶる国木田を敦は慌てて止めたのだった。
―――
場所を移して何処かのカフェ。
「妹ぉ!?」
「そ。正真正銘、芥川君の妹さ」
銀が何故、『芥川』と『同じ家』に向かって行ったのかの答えを紅茶を飲みながら紬が教えたのだ。
「昨日は仕事を終え数日振りの帰宅で……この仕事衣装を洗濯屋に預けた後、兄と待ち合わせを」
昨日、樋口が目撃したツーショットの真意を銀の口から聞いて樋口の顔に笑みと涙が浮かぶ。
「大丈夫ですか?」
「泣いてません!」
その姿を見て、少し呆れた目を寄越しながら敦が声を掛けた。
「全く……如何する花袋?お前マフィアの類は嫌いだろう」
「……」
国木田の言葉に少し考え、
「!」
ばっ!と銀に手紙を差し出す。
「貴女が黒社会の人間だとしてま儂は貴女に尽くそう。貴女を一目みた瞬間、儂は美しさの意味を知った」
「……」
震える手で差し出されている手紙を、花袋を見て
『撫子』銀は―――――…………