第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
「バレてるのか」
「勿論。バレないと思ってたの?」
「真逆」
紬がギュッと太宰に抱き着く。
完全に2人の世界に入っている太宰兄妹をポカンとした顔で観ていた男達だったが、突然、時計を持った男がハッとし、小声で武器を構えるように指示を出す。
それに応じて男達が銃口を2人に向けた。
「馬鹿め!隙だらけだぜ!」
男が声高々に云うも、
紬は太宰に抱き着いたまま振り向こうとする様子は一切見られないし、兄の方は兄の方で、甘える妹に満足しており此方も一切視線を動かさない。
「「「…………。」」」
あれ?
今って撃ったら駄目だっけ?
そんな感覚に陥るほど2人の世界には声すら届いていないようだ。
ゾワッ……
「「「!?」」」
それもその筈だ。
突然、襲い掛かってきた殺気。
そして、その方向から現れた人物に男達が慌て始める。
現れたのはポートマフィアの幹部が一人。
「貴方はっ……ポートマフィアのっ……!」
「あのクズ兄妹、面倒だけ押し付けやがって」
チラッと太宰兄妹を一瞥し、舌打ちする中原中也。
そして、男達に視線を戻し――
「相手が悪かったなァ」
「「「!」」」
地面を蹴った。
―――
「いやー迷惑を掛けたねー」
「ふふっ。童心に帰れて愉しかったかい?」
「うーん。あまり」
「……おい」
のんびりと話す太宰兄妹に米神に青筋を浮かべている中也。
「「居たの中也」」
「居たのじゃねーよ!誰がコレを壊したと思ってやがんだ!」
「「中也だけど偶々でしょ?」」
「~~~~!」
時計の傍……。
否。男の傍に転がっている時計の残骸を見ながら笑顔で首を傾げながら答える2人に、中也は苛立ちしか起きずにワナワナと振るえている。
「まあこんな小規模組織が探偵社とマフィアの相打ちを狙うなんて不可能だったってことだね」
「綺麗にまとめてんじゃねーよ!」
「紬、何処かに飲みに行こう」
「いいねー」
「聞けよ人の話!」
戻る前と変わらず、完全に2人の世界である
太宰兄妹は
「「後始末宜しくね、中也」」
スタスタとその場を去っていったのだった――。