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【文スト】対黒

第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌


「この10年分で、また餓鬼を成長させて稼がせれますよ」

「本当に良い能力だな」

男がニヤッと笑う。
異能を発動した男は嬉しそうに頭を下げた。


「紬達から奪った年数を子供に分配して身体を売り物にさせてるのか」

「な……!」

「!?」


収まった光から現れたのは、光に包まれる前と同じ状態の太宰。
その光景に、男達が驚愕する。


「何故だ!?何故……!」

「私に異能は通じないよ」

太宰はふふっと笑って、歩み寄るべく足を進めた。


「っ!だったら死ね!」


一度は下ろした銃を構えて、男が発砲しようとした。


ポンポンッ

「?」

背中を叩かれて、振り向く。

叩いた人物を確かめるべく視線を動かした瞬間に


「かっ……!?」


突然、襲ってきた痛みで崩れ落ちた。

「ボス!?」

男達があわてふためく。

音も立てず。
気配を断って突如、現れた人物は


「誰に向かって死ねって?勿論、自分自身にだろう?」

不機嫌な声で云った。


「な…?お前は……」

「私を知っているのかい?可笑しいね。私は君のことなど知らないと云うのに」

無表情でそう云った紬は、男の手に握られている時計を見る。

「ああ……合点がいった。君が私に異能を掛けた人物か」

紬が手を伸ばした。

「!」

男は咄嗟に走り出す。


「勘が良いねぇ」


へぇーと感心しながら真っ黒な笑みを浮かべて笑う紬。

その顔をみて、紬の足元に転がっているボスだった男をみて。

他の男達も先頭を走っている男に続く。


「紬」

その連中を見ている紬の名を、兄が呼ぶ。

「……治」

「如何したんだい?そんな不機嫌な顔で私を見るなんて」

「別に」

フイッと兄から男達の方に視線を戻す。


その行動に、やれやれと溜め息を着いて。


「――――――怒るよ?」

「!」


太宰が云った。

その言葉にピクッと反応をする紬。
そして、慌てたように振り返ろうとするが。

その前に太宰が後ろから手を引いた。


ポスッと太宰の懐に収まる紬。

「ふふっ。善い子」

「……本当にそう思ってる?」

「今は、ね。私に内緒で中也の元に行った上に泊まりの算段をしていたことは未だ怒ってるけど」
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