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【文スト】対黒

第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌


―――

太宰は国木田の証言を元に、取引現場だったらしい倉庫に来ていた。


月明かりに照らされた倉庫内に無造作に転がるモノを見て、ため息をつく。


「はぁ。私の許可なく紬に気安く触ったりするから」


返事をすることなど
もう数時間前に出来なくなってしまったソレ等に向かって話し掛けた太宰だったが。


「触っただけで殺すとは、随分な仕打ちだな」

「!」


返事が返ってきたのだ。後ろから。


数は凡そ10人。
全員が黒尽く目の恰好に武装を決め込んでいる。


「帰って来ないと思えばこの始末………貴様、何者だ?」

「私は妹を迎えに来た、只の通りすがりさ」

「だったらコレを殺ったのは誰だ」

ジャキッ!

一斉に拳銃を構えて太宰に云い放つ。


「少なくとも私ではないよ」

降参のポーズをしながらヘラッと笑う太宰。

「そうか。じゃあ貴様にもう用は無い」

男が引き金に指を入れた。

しかし、太宰は一切揺るがない。


「その拳銃、君たちの?」


「!」

太宰が鋭い眼と共に質問を投げ掛ける。


男がピクッと反応したのを確認して、続ける。


「殺された理由は君たち自身にあると思うけど違うかい?」

「……貴様……ポートマフィアの者か?」

「うふふ。真逆」

ニッコリ笑って答える。
そんな太宰をみて、男が一人、太宰と話をしていた男の隣に近寄る。


「ボス、此処は俺が」

「そうだな。何者か判らん…下手に殺してポートマフィアの者だったら拙い」

「んー?何の相談だい?」


コソコソ話している男達を笑顔を崩さずに観ていた太宰が口を挟んだと同時に、近寄ってきた男がニヤリと笑って一歩前に出る。


「昨日の20年分は既に使い切ったからな」

そう云うとジャラ…っと音を立てながら何かを取り出す。


「懐中時計?」

「ああ。俺はこの時計で他人から時間を奪ったり与えたり出来る異能力者だ」

「ふーん」

「時計を壊せば元に戻るが…」


ぽうっ!

「!」

太宰の足元から光が溢れる。


「貴様に壊すことが出来るかな!」


男が時計のネジ巻を押した。


カッ!


眩い光が放たれ、ゆっくりと弱まる―――。

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