第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
「目的は探偵社とマフィアの相打ちか」
「だろうな。彼奴等が俺達から盗んだ銃を持っていた事を考えるとそれを利用する心算なんだろ」
ふーん、と詰まらなそうに相槌をうつ紬。
「でも何であの時、その話に乗らなかったんだい?」
あの時―――
『ご存知ですか?武装探偵社の調査員が数名、戦闘不能なことを』
『だから如何したって云うんだよ』
『耳寄りな情報かと思いまして』
『関係無い。俺達がその気になれば、あんな弱小組織なんざ何時だって潰せる』
中也と男達の取引での会話。
中也がそう言い捨てた後に明らかに狼狽した様子の男達。
予想していた答と違っていたのだろう。
「まあ手前は知らねーか」
「何をだい?」
「首領から探偵社と争うことは避けるように命が下りてる」
「へぇー」
双方が同意見と云うことは、つい最近に何かあったのだろう。
紬は中也に訊くこと無く、勝手に解釈する。
「要は休戦中ってことか」
「そうなるな。だが他の連中はそんなことは知る由も無ェし、戦争の後だ。今なら両方殺れると思ったんだろ」
「……ふーん」
戦争とやらで戦力が完全に回復しきっていないのか。
ポートマフィアも、探偵社も。
此処まで聞いて、紬の中で話が凡て繋がったのだ。
①中也…ポートマフィアの追っている組織の狙いは、探偵社とマフィアの相打ちだということ
②その組織は、マフィアから「武器」を、探偵社から戦闘ができる調査員という「戦力」を削ぐことに成功したということ
③その組織はマフィアから疑惑の眼を向けられないために情報提供を行ったということ
しかし、誤算が生じた。
―――紬だ。
「計画としてはそこそこの出来だね。しかし、敗因はポートマフィアから奪った武器を所持していたことだ」
「まあ、手前が居なかったら使う予定なんざ無かっただろうがな」
「子供一人始末するのに拳銃を使わないといけないような連中だ。どうせ直ぐに潰れるさ」
「……。」
中也は『相手が悪かっただけ』と思いこそすれど、口に出さなかった。
「まあ2人始末したし、そろそろ事が動き出すでしょ」
それは置いといて、と云いながらポケットに手を入れる紬。
「?」
「訊きたいことがあるんだけど」