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【文スト】対黒

第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌


―――

「ご馳走さま」

「相変わらず良く食うな」

「お腹空いてたしね」

ふふっと笑うと食器を持って台所へ移動する紬。
カチャカチャと云う音を聴く限り、後片付けをしているのだろう。


「……フツーにしてりゃ気が利く只の女なのにな」

中也はワイン片手にポツリと呟いた。
そして、ふと過った考えも口にする。

「いや、太宰が居なかったら此処まで歪んでなかったのか?」

「どうだろう?私が狂ってるから治が合わせているのかもしれないよ」

「!」

洗い物を終え、中也の向かい側に座る。


「ところで中也」

「……何だよ」

何処から自分の呟きを聞いていたのか。
その考えのせいで顔を反らしたまま返事をする。

「何の情報交換だったんだい?」

勝手に持ってきたミネラルウォーターに口を付けながら問う。

「裏切り者を捜してる」

「へぇー。中也の部下?」

「違う。が、俺達の取引内容に関する機密書類を盗んでいった」

ワインを注ぎながら簡単に説明をする。


「となると、目的は『武器庫』か」

「……だろうな」


その簡単な説明だけで、ポートマフィアの首領が導き出した答と一致する事を述べる。

「その情報が既にバラ撒かれたせいで武器の移動に、取引に、凡ての始末が回ってきた」

「後はそうなった元凶の始末だけってことね」

「…手前に仕事の話するのが一番楽だな」

「照れるね」


10年前に戻されたとは信じ難いほどの理解力。
しかし、自分に害を加えようと企てる者を躊躇いなく殺す残忍さ―――

雰囲気は間違いなく10年前のモノの纏っている紬。


「で?お前は俺に手を貸すのか?」

「この件に関して云えば是だよ」

「ほぉ」

中也がワイングラスを置く。

「あの男達が所持していた拳銃はポートマフィアのだった」

「!」

「中りか。道理で私を止めない筈だ」

「何処まで見通してんだ手前は……」

「今日の取引相手がポートマフィアの壊滅を企てんとする小規模組織だってところまで」

「全部じゃねーか」

チッと舌打ちして紬を見て、隠していた部分も話始めた。



「成る程ね。と云うことは、あの連中の支配下に私の時間を奪った連中が居るってことか」

「恐らくな。でないと昨日の今日で探偵社の戦力を削いだことなんざ知る筈が無ェ」



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