第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
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国木田は目を醒ました。
「目ェ覚めたかい?」
「!」
掛けられた声に反応してガバッと上半身を起こす。
「此処はっ…!」
「何だい?そンなに慌てて。此処は探偵社の医務室だよ」
探偵社の専属医―――与謝野が国木田に説明する。
「探偵社……」
その言葉を聞いてホッとする国木田。
しかし、直ぐにハッとして再び慌て始める。
「あの女は…!俺と同じ状態の……!」
「紬のことかい?」
与謝野が首をかしげて問う。
国木田は先刻の出来事を話し始めた―――。
「だって太宰。如何する?」
ポートマフィアと接触した辺りの話を始めた瞬間に太宰も会話に混ざりに来たのだ。
もう少し慌てた様子になると思いきや、何事もない様子で話を聞いている2人に動揺する国木田。
太宰に至っては『困った妹だねー』と笑っているのだ。
「如何もしませんよ。気がすんだら帰ってくるでしょう」
「おい、貴様!それでも兄妹か!?マフィアに拐われたかもしれないんだぞ!?」
国木田はそんな太宰の反応に怒りを露にする。
しかし
「紬が親しげに話していた男は『中也』と呼ばれてたンだろう?なら顔見知りの筈だしねェ」
「今の紬が誘拐されるなんて有り得ないからね。自らの意思で付いていったとしか思えないよ」
「なっ……!」
2人の反応は変わらなかった。
「それに、君を探偵社まで送ったのも中也の方だろうからね。今のところは敵対する気では無い筈だよ」
「ば……馬鹿な!あんなに殺そうとしていたのに……有り得ない!」
「今の紬が国木田君を助ける事の方が『有り得ない』」
「!?」
太宰がアッサリ云った言葉に国木田は固まった。
先程、向けられた『殺気』。
――太宰の言葉が嘘でないことが判ったからだ。
「マフィア全盛期に戻されたっていうのも困りもンだねェ」
「ですねェ」
何事でもないかの様に話す2人に国木田は最後までついていくことが出来なかった―――。