第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
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「今、何歳って云ったか?」
「12」
中也の車の助手席で窓の外を眺めながら答える紬。
「…未だ終焉想歌を制御出来ねー時期か」
「何だい?未だって。今の私は制御出来てるとでも?」
ハッと鼻で笑って前を向く。
「太宰の糞野郎は教えてくれなかったのかよ」
「……え……」
紬は漸く中也の方を見た。
「……本当の話?」
「何で俺が如何でも良いことを嘘つかなきゃなんねーんだよ」
「…………。」
中也が呆れる。
「中也……今晩泊めて」
「断る」
「泊めてくれたら治の所持している様々な記録の中から、中也の恥ずかしい失態に関するものを2つ消しておいてあげる」
「一寸待て!何だぁ!?一体、どの件についてだ!?」
「既に私が知っているものが十数件あるから其れから10年と考えればもっとあると思うけど」
「ぐっ……!」
確かに太宰はそう云う男だ。間違いなく人が隠しておきたい黒歴史ですら完璧に掌握していることだろう。
そして紬が取引において嘘を云うわけが、無い。
「はぁ~~」
中也はガクッと項垂れて溜め息を着いた。
「5つ」
「4つで手を打とう」
紬が笑顔で云った。