第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
カチッ カチカチッ!
乾いた音だけが静かな倉庫に響き渡る。
「おい、早くしろってば!」
「だから引き金が動かねぇんだよ!」
「はぁ!?此処に来る前に使ったときは大丈夫だっただろうが!」
「だったらお前がしてみろよ!」
男達が喧嘩し始めたのを詰まらなそうに欠伸しながら観ている紬。
「うわっ、ホントだ」
「だろ!?」
しかし、退屈過ぎたのか。
「おいっ!」
紬は黙って歩き出したのだ。
ガッ!
そんな紬の腕を取り、男が制止した。
「……あーあ。触ってしまったね」
「?」
紬が男に呆れ顔を寄越す。
次の瞬間には―――
「う"……ぁ!」
「!?」
男は胸を押えながら苦しみもがき始めた。
もう1人の男が慌てる。
「苦っ……助…て」
「突然どうした!?おい!」
男は、動かなくなった。
「何だ……何が如何なっている!?」
使い物にならなくなった銃を投げ棄てて男に駆け寄るが、思考は現状を全く理解できていない様子だ。
「私に気安く触ったりするからだよ」
紬が動かなくなった男を見下ろしながら云った。
「私の『終焉想歌』は触れたモノの動作を停止させる」
「何を……云っているんだ……?」
「君は異能を見るのは初めてかい?」
「異能………」
この界隈では珍しいことではない為、聴いたことはあった。
現に、先刻の取引でも話のネタになっていた「武装探偵社」の社員は、この界隈では異能力集団と云われ恐れられている―――。
「私に突き付けたから銃の引き金が動かなくなった。引き金さえ動かなければ銃の性能……『弾を発射する』という機能が停止したことになるからね」
「……。」
男の顔が青くなる。
「では君に謎かけをしよう。人間という動作を停止させるため………何が停止すると思う?」
紬が男に歩み寄りながら話し掛ける。
「ヒッ……!」
そして、男に触れた。
「答えはね、心臓だよ」
光の無い笑顔を浮かべて、云った。