第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
ドサッ
地面に倒れる国木田。
「殺さないでよ、中也。その男が如何なろうと私は何とも無いけれど、きっと治に叱られてしまう」
「手前が今、何を思ってるかは知らねーが俺達は敵だぜ?大人しく云うこと訊いてやる義理なんかねーんだけど」
「おや、そうなのか。それでは仕方無いね」
「……。」
淡白な返事。
凡てが『如何でもいい』と云わんばかりの態度。
兄以外に関心がなく何にも興味を示さず、
何を考えているのか全く判らない言動。
―――間違いなく、幼い頃の『太宰紬』だ
「じゃあせめて私が去ってから始末してくれ給え」
クルッと方向転換して、中也に背を向ける紬。
「……何処行くんだよ」
「取り敢えず先刻の連中を追うことにするよ」
そう言いながら懐から四角形の機械を取り出す。
液晶画面に白い点が1つ動いている。
「お前は幾つになっても変わらねーな」
「良い意味でかい?悪い意味でかい?」
「後者に決まってるだろ」
チッと舌打ちしながら中也は紬を……
否。
紬の方を見た。
ジャキッ!
「!」
紬の目の前を男2人が立ち塞ぐ。
其れだけに留まらず、銃を紬の額に突き付けた。
「逃げられると思うなよ」
「秘密を知られたからには子供だろうと生きて帰すわけには行かない」
「………。」
紬に云い放ったのは先程、中也と会話していた男……の取り巻きの様だ。
「帰ったんじゃなかったのかよ」
「貴方が中々出てこないから見てくる様に云われたんですよ。ボスは帰りましたけどね」
「天下のポートマフィアの、しかも幹部様がまさかこんな餓鬼の始末に手子摺っているとは思いもしませんでしたけどね」
「……。」
嘲笑う様に良い放つ、紬に銃を突き付けている男。
そんな男の発言をフムフムと、全く怯えもせずに聴いていた紬が口を開いた。
「そんな天下のポートマフィアの幹部様が始末出来ない私を君達が殺せると思う理由はなんだい?」
「知りたいか?答えは―――こうだ!」
男が引き金を引いた。
カッ……カチッ
「ん?」
「何してんだよ。早くしろ」
カチッ…カチッ
隣にいる男が少し苛立ちながら云う。
「いや、引き金が!」