第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
今、自分達が居る場所は
昼間でも薄暗い、人気の無い場所だ。
そんな場所に故意に来るなど善からぬ連中に決まっている―――
決まっていると云うのに。
自分と同じ境遇らしい女性は臆することなく行ってしまった。
危険だと判っているのに手懸りを求めて………。
次の瞬間には国木田も走り出していた。
「帰れば良いのに」
物陰から目的の者達の様子を観れる位置に居た紬の隣に国木田も腰を降ろす。
「俺だって本当は帰りたい。しかし、お前を放って帰ればきっと後悔する」
「……君、本当に私と相反する人種だね」
「は?」
「………まあ。どのみち」
「?」
紬は溜め息を着いた。
そして直ぐに目を閉じる。
決して覗き見る様な真似はせず、会話だけを拾おうと集中している様だった。
国木田も耳をそばだてる。
「―武装探―――調―――」
「だから―――」
「耳寄りな情報か―――」
「――――い。俺達――――」
途切れ途切れで聞き取れない。
国木田は紬を見た。
「……。」
何時の間にか目を開けているものの、先刻と変わらぬ無表情でいる。
何を考えているのか全く判らん………
そんな事を思った瞬間だった。
コツコツコツ……
目の前を数人の、黒尽く目の男達が去っていく。
ヤクザやマフィアの類いの連中にしか見えなかった。矢張り危険な場面じゃないか!
「おい!直ぐに此処を去るぞ!」
慌てて紬に声を掛ける。
「無駄だよ」
やれやれと云わんばかりに溜め息を着いた紬に苛立つ。
「何がだ!早――」
そういった瞬間に、影が国木田を覆った。
「人様の行動を盗み見とは随分良い趣味じゃねーか」
「!?」
急に男が現れたのだ。
国木田の顔が一気に青褪める。
「餓鬼か。運が悪かったなあ」
「っ!」
獰猛な笑みを浮かべて良い放つ男。 国木田が思わず後退りする。
そんな時だった。
「………中也かい?」
「あ?」
「!?」
国木田の後ろ側にいた紬がゆっくりと立ち上り、口を開いた。