第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
「………はぁ」
「……?」
紬が態とらしく息を吐いた。
それと同時に空気が戻る。
「君は少々、莫迦だね」
「は?」
呆れた顔で口を開く紬。
「考えてもごらんよ。君と違って私には此の状況を知っている身内があの社に居るのだよ」
「ああ……お前そっくりの男の事か?」
「そう。私の片割れ」
「片割れ………双子なのか?」
「そう。そっくりだろう?」
「まあ……双子かは判りかねるが兄妹と云われれば納得できる程には似ているな」
国木田が真顔で返事する。
「昨日のやり取りを観ていたならば、私たちの兄妹仲は悪くは見えなかった筈だ」
「そうだな」
「そんな兄が私の行動を制止しなかったのだよ?」
「!」
言われてみれば。
目を見開いて紬を見る国木田。
「話すのも疲れたから、これで説明は終わりだ。私は予定通り出掛けるから邪魔しないでくれ給え」
そんな国木田をジロリとみて。
紬は国木田の横を通り抜けて歩き出した。
「あ、おい!」
声を掛けるも反応しない紬。
「ッ!」
国木田も歩き出す。
紬と一定の距離を保ちながら昨日の現場に向かうことにしたのだった―――。
―――
「……おいっ」
「シッ」
「ッ!」
コツコツコツ………
近くから響く足音。
二人は物陰に潜み、息を殺す。
昨晩の現場――
建物に入ったまでは良かった。
辺りを詳しく調べようとした矢先に人の気配がして慌てて隠れているのだ。
足音が少し遠ざかる。
はあー。
何年か振りに呼吸する如く息をする国木田。
そして全く動じていない紬を見やる。
「足音と気配からして5、6人は居るようだね」
「そんなこと云ってる場合か!早く此処から去るぞ!」
「だから来なければ良かったのだよ。先に帰るといい。私は様子を見てくるから」
「は!?」
言うが早いか。
紬は先程の足音が向かった方へ移動してしまった。
クソッ!どうする……!