第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
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「治……」
「相変わらず甘えん坊だねぇ。嬉しいけど」
「……。」
ひとつ布団の中で一緒に眠る太宰兄妹。
「今は違うの?」
「今も大して変わらないよ」
ふふっと笑いながら紬を抱き締める。
「治は今、22歳?」
「うん」
「マフィアは辞めたの?」
「色々あってね。判ってると思うけど紬も一緒だよ」
「……ふぅん」
詳しく聞く気は無いようだ。
適当に相槌を打って、次の質問を小声で始める。
「……結婚は?」
「してないよ。するかい?」
「……何で私に訊くの?」
「他に誰が相手で居ると思ってるの?」
「知らないよ。……だから聞いてるんだ」
太宰の胸に顔を埋める紬。
「私は紬を手放す気など微塵もない」
「……。」
狂気を孕んだ目を向けられ、顔をあげる紬。
「それは今の私にも云えるのかい?」
「当然。譬え赤子に戻されていようとも変わりはしない。紬でありさえすればどんな姿であろうと関係無い」
「……。」
紬が目を反らす。
「疑ってるの?拒絶しようとしてるの?」
「……どちらでもないよ」
それを無理矢理、制止する太宰。
「今も相変わらず治の傍に居る事が判った……如何云う立ち位置かも」
「……。」
「……今の私では代われないじゃないか」
泣きそうな表情を浮かべる紬。
太宰は大袈裟に「はぁ」と溜め息を着く。
そして行動に移った。
「関係無いって云ってるでしょ」
「!」
覆い被さる様に位置を変え、
紬のパジャマ代わりに着ているシャツの釦を外し始める。
「……治?」
着るもの凡てサイズが合わないためシャツの下は当然ながら素肌のみ。
「初めて紬を抱いたときは無理矢理だったからね」
「あっ……!?」
そう云いながら、身体に手と舌を這わせる。
今の紬にとっては初めての感覚。
身体をビクッとさせる程に大きく反応する。
それを愉快そうに見て、
「今回は優しくするから、ね」
行為を止めることなく、笑い掛ける太宰。
「……っ!」
その顔を見て、
紬は兄を怒らせた事に漸く気付いたのであった………。