第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
「……。」
口元に手を当てて考え込んでいる様子の紬。
先程から一切変わらない表情は、何を思っているのか全く読み取れない。
国木田はそんな輩が存在するのか、とブツブツと云い始める始末。
如何したものか。
敦が困っていると、紬が口を開いた。
「事情と状況は判った。問題は此れから如何するか、か」
「!」
話が、前に進んだ。
「お前はこの男の云うことを信じるのか?!この男が元凶かもしれんだろう!?」
国木田は紬に云い放つ。
信じてもらえないのも無理は無いが、敦は嘘は云ってないため如何することも出来ない。
それに気付いたのか。
敦をチラリと見て、紬は続ける。
「私は君と違って異能力については識っているし、自分が異能力者と云う自覚もある」
「何だと!?」
国木田が驚愕する。無理もないが。
「この青年の話を聞く限り、話に矛盾もなければ嘘をつくメリットも感じられない。この身丈に合わない服装の説明も付く」
「……。」
「それに、君も異能操作で襲われた対象であることを考慮すれば今の君に自覚が無いだけで、君も異能の所持者だったのだろう」
「!」
「俺が…異能力者だと?」
流石、鋭い。
敦は紬の発言に言葉も出なかった。
しかし、大きく首を縦に振り、肯定の意を示す。
「そうなれば、異能力集団『武装探偵社』の社員と云う話も辻褄が合う」
「お前はその武装なんちゃらを知っているのか?」
「……まあ。噂程度に」
紬はふぅと息を吐く。
「何にせよ、私達に今出来ることと云えばこの青年の協力を得て状況を理解すること以外他、無いさ」
「む……。それは確かにそうだが……」
国木田も紬の云うことを渋々、納得したようだ。
そんな顔を見て敦は苦笑する。
「取り敢えず、社に帰りましょうか」
「……着いていくしかないか」
「そうだね。あ、青年」
「あ、名乗ってませんでしたね。僕は中島敦です」
「……国木田独歩だ」
「私は太宰紬。敦さん。そのベルトを貸してもらえないだろうか?」
「え?ああ……大きいですもんね」
そう云うと、飾りにしかなっていなかったベルトを紬に貸す。