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【文スト】対黒

第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌


弛くウェーブが掛かった、
肩につかない程度の長さの黒髪に、ブカブカの服。

「……。」


何処からどう見ても、幼い太宰治にしか見えない。


彼奴等、『10年分を奪ったって』云ってたな……


「紬さん……失礼ですけどお幾つですか?」

「……。」

あれだけ敵意を剥き出しにしていたにも拘らず、害がないと思ったのか。
完全に敦の方など見る気もなく、ぶかぶかに為った服の袖や裾を曲げる等している。


どうしよう!?本当にあの紬さんかな!?



完全に別人としか思えない紬の態度に、敦が怯え始める。
……幼子にしか見えないのに、だ。

「……あのっ……!」

「……12歳」

「!」


言葉が漸く返ってきた。
衣服の調整の手が止まっており、いつの間にか敦の方を見ている紬。
無視されていた訳では無いと云うことが判り、敦は安堵の息を漏らした。


「……今度は此方から質問しても?」

「あ、はい」


先程、見せた敵意は何処に行ったのか。
表情は無いものの、殺気は収まっている紬に緊張しながら答える敦。

「君と私は初対面の筈だが何故、私の名を識っているんだい?身の丈に合わないこの服装に関係でも?」

縮んでも太宰紬は矢張り、太宰紬だった。
この僅かな時間で殆どの状況整理が終わっているようだ。
敵意を引っ込めたのも恐らく、
敦の慌て方を見て、敵では無いことも想定の1つに入れたのだろう。

「えっと……実は―――」

敦が説明しようとしたと同時に、漸く国木田が目を覚ました。

「国木田さん!」

「………貴方は?それに此処は……」

「!?」

よもや国木田に『貴方』呼ばわりされる日が来ようとは。

敦はゾワッと、何かが身体を駆け抜ける不快感を体感し終わると、2人に事の説明を始めたのだった――。


………。


「し…信じられん。世の中、そんな異能力などと云うものがあるのか!?」

「えっ……!?」



敦が2人と会話して判ったこと。
それは、身体だけでなく記憶までもが10年前―――。
12歳まで戻ってしまっていると云うことだ。



国木田さんは自分が異能力者と云うことを未だ知らないのか!?


『異能力』自体を信じていない国木田に困惑する敦。
そして、紬の方を見る。
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