第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
漸く光が収まって、目が開けられるようになると敦は慌てて2人の元に駆け寄った。
「国木田さん!紬さん!大丈……夫……」
気を失っているのか。
倒れこんでしまっていた2人に近寄って敦は目を見開いた。
「え……?何が……如何なってる……?」
困惑する敦。
カツン……
「!?」
ばっ!
足音を正確に拾い、音のした――入り口の方を向いた。
「此れで報酬はガッポリ手に入るし、一石二鳥だな」
「ああ。こうも巧く行くとは」
「誰だッ!」
入り口に立っていたのは二人組の男と……
「!……君は………」
「……。」
敦が手に持っている縫い包みの持ち主の筈の少女だった。
「この子は『早く大人に成りたい』っていうもんだからよぉー」
男が卑下た笑みを含んだ声で話し出す。
そして、手に持った『何か』を少女の方に向けると
カッ!!!
先刻、紬達を襲ったモノと同じ光に包まれ―――
「!?」
少女は、居なくなっていた。
「なっ………」
代わりに立っているのは中高生程の女の子。
小さくなった服が今にもはち切れそうな女性は嬉しそうにはしゃぐ。
「そいつ等の時間を『10年分』ずつ貰ったからな。此れで暫くは稼げる」
「他の奴等にも分けて稼がせるぞ」
「キャッ!」
男達が女の子の手を引いてその場を去ろうとする。
「待てっ!」
敦は慌てて追い掛けようとしたが
「うっ……」
後方から聴こえた呻き声に足を止めた。
「紬さん……大丈夫ですか?」
「………。」
先に起きたのは紬だった。
周囲を窺い。
「……。」
自分の恰好を窺い。
「……。」
敦を見詰める。
そして―――
「君は誰だい?何故私の名を知っている?」
「!?」
ゾワッ
冷たい眼。冷たい声。
向けられる殺気。
「真逆……紬さん……何も覚えてないんですか………?」
其所に、敦の知っている紬は居なくなっていたのだ―――。