第28章 己ノ終焉ヲ想ウ、歌
時刻は午後8時―――
人気の無い倉庫が建ち並ぶ一画。
「クソッ!!完全に見失ったか!?」
息を切らせて周囲を窺う男性が一人。
「国木田さん!此方にも居ません!」
其所に白髪の青年が近寄り、声を掛ける。
「そう遠くには行ってない筈なんだが……ん?敦。紬は如何した?」
「紬さんは彼方の方を探し「おーい」」
敦と国木田が話していると、丁度、件の者の声がそれを遮った。
声のした方を振り向く2人。
「こっちこっちー」
二人は少し離れた位置から手を振っている人物に駆け寄っていった。
「紬さん」
「見付けたのか?」
敦と同じ程の背丈の。
紬と呼ばれた女性は、立っている前の建物の入り口を指差した。
「否。私も完全に見失ってしまったのだけど此所だけ扉が開いているのだよ」
「「!」」
良く見れば扉が僅かに開いている。
走って見渡す程度ならば先ず気付かないほどの隙間。
国木田と敦がニコニコ笑っている紬を見て、
無言で頷くとその扉の中に入っていった。
結構な広さのある、ガランとした倉庫。
「想像ったより暗いねぇー」
「そうですね」
「少し声を押さえろ!気付かれたら如何する!」
「あ、すみませんっ!」
紬と敦の会話……の音量に国木田が注意をする。
「国木田君。誘い込まれてるのは間違いないのだからコソコソしたところで無意味と思うけど?」
「む。」
「敦君。何か見えるかい?」
「特に何も………あっ!」
「「?」」
虎化した眼が何かを捉えたのか。
敦が其れに向かって駆ける。
そして、何かを手にすると後方に居る紬達に向かって笑顔で手を振った。
「在りましたよー!少女の持ってた縫い包み!」
「何!?本当か!」
「……。」
敦の声に国木田も歓びの表情を浮かべる。
しかし、隣の紬は口元に手をやり、何かを考え始めた。
「?如何した?紬」
「出来過ぎているからね。そろそろ何か罠が………」
カッ!!!
紬がそういった瞬間、光の輪が二人各々の足元に現れ―――
「国木田さん!紬さん!」
目映い光が2人を包んだのだった―――。