第27章 行き着く先は―――
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「織田作が死んだって?」
部下達の報告を受けて眉間に皺を寄せる紬。
「はい……1週間前に」
「……。」
紬が黙る。
遠方に出掛けていて漸く帰宅できた瞬間の話だ。
「あと……大変申し上げにくいのですが………」
「え」
部下の報告を聞いて紬は部屋を飛び出した。
――1週間前―――
「クリスマス以来、部屋には入ってなかったけど」
紬の寝室に入り、部屋を眺める。
あの日、無我夢中で紬を抱いた。
その欲は留まることを知らず。
気が緩めば直ぐに表に出てきてしまいそうな程、私の中で強大なモノに成っていた。
一度出てきてしまえば抑えるのが大変困難なモノだと判った為、あれ以来、紬の寝室には行かないようにしていた。
仕事で不在の紬。
戻るのは1週間後と云っていたか。
今すぐに連れ戻したい。
しかし、だ。
今まで散々拒絶していたのに、マフィアを抜ける私に着いてきてくれるだろうか?
……100パーセントではないだろう。
となると保険が要る。
確実に紬が私の元を訪れる保険が。
一度でも私の元に来さえすればその後は如何にでもなる。
嫌だと拒めば、帰れないようにするまでのことだ。
その保険となるようなものは――………
直ぐに目に留まった。
「大事にしてるのか、コレ」
殺風景な部屋に1つだけ異色を放つぬいぐるみ達。
白の兎には白のマフラー。
黒の兎には黒のマフラーが巻いてある。
その二つを手に取り、代わりに紙切れと。
机の上に手紙を置く。
「このぬいぐるみが人質なら絶対に来るかな」
私は紬の部屋を離れた。