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【文スト】対黒

第27章 行き着く先は―――


人の気配など全く無い。

コツ……コツ……カツン

「「!」」

よく見れば四角く切れ込みの入った床。

中也と目配せして。

紬が云っていた地下への隠し通路へ入っていった。


「どんだけ地上を捜しても見付からねぇ訳だ」

「此処まで巧妙だとね」


進んだ通路の先に人の気配が溢れている。


警戒など全くしていない程、楽しそうに話す声が漏れてきている。



本当……


「相手が悪かったね」
「相手が悪かったな」



凡てを片付けて、首領に要点だけを報告して。



やっと息を着いたのは日付が変わってからだった。



「ふう」

身に纏った汚れを落とし、濡れた髪をタオルで拭く。


そして。

ふと目に入ったのは黒のマフラー。



紬が編んでいたのは白のマフラーで。

今日使っていたモノだった筈だけど。

「……。」

そのマフラーを手にとって私は部屋を出た。


向かうは隣。


ドアノブに手を掛けて鍵が掛かっていることを確かめるとヘアピンで開ける。


今日は日付も変わって12月25日。


昨日までに仕事を片付けたいと云っていた。
部屋に居ないことも考えた。


―――居なければ捜すまで。


そう思いながら侵入した部屋には望んでいた人の気配があった。


音を立てずに近寄る。


スー……スー……

規則正しい寝息。
侵入者を許しているのに起きている気配が全く無い。


「……。」


マフラーを床頭台に置き、ベッドに侵入した。

そして、腕を回した瞬間。

「!?」

紬が起きた。

身を少し動かすも私の腕の力の方が強かったのか。

直ぐに動かずに大人しく腕の中に納まる。

「治が寝込み襲ってくるなんて想定外だよ」

「なに。私以外なら有り得るわけ?」

「こんな職場だ。無いとは言い切れないだろう?」

「あるの?今まで」

「無いよ」

ふふっと笑って云う紬。

「それに侵入を許したところで『終焉想歌』が発動する」

「異能に頼るのは善くないねぇ」

「本当にね。今反省しているよ」

そう云いながらも全く抵抗しない。

「それで?こんな夜中に何の苦情だい?」

「△△を始末しに行った積もりだったのに□□まで居たからね。そのお礼に」

「ふふっ。お陰で私の仕事が減ったよ。有難う」
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