第27章 行き着く先は―――
何が良かったのだろうか。
何時もの含みのある笑顔ではない笑顔を向けられて調子が狂う。
「……行くよ」
「!」
紬の手を引いて歩き出した。
繋いだわけではない。手を引いているだけだ。
誰に云い訳しているのだろうか―――?
「矢っ張りクリスマスとなると街が賑やかだね」
「まあ表は今が稼ぎ時期だからねぇ」
「ふふっ。確かに気持ちを高揚させることで繋がる利益は多いかもね」
笑顔を絶やさない紬。
そんな紬を通り過ぎさまに見ていく男達。
無理もない。
私が驚いたのだから。
こうしていれば汚れなど一切知らない、普通の。
一般の女性にしか見えない。
もしかしたら。
紬はそれを望んでいるのだろうか?
着飾る事を覚えて、女性らしく笑い。
女性らしい趣味を持ち始めて、ぬいぐるみが欲しいと云い出た。
仕事の邪魔なんて相変わらずだと思っていたけれど、何かが違う気もする。
最近、殆ど会わなかった。
その間に何か心境の変かでもあったのだろうか?
「治?如何したの?」
「いや、何でもないよ」
「そう?」
急に黙った私に心配そうに声を掛ける紬。
何か違和感―――。
「あ、あの店だよ!」
「はいはい」
はしゃいだ様に云って、店を指差す。
「買うまでで良いからしっかり恋人を演じてね」
「云われるまでも無いよ。此処で失敗すれば私の昨日1日と10時間が凡て無意味になるからね」
「ふふっ」
繋いだ手に力が入ったのが判る。
未だ違和感の理由に気付かない。
格好が違うせいか?
店に入る。
私達以外のカップルが既に行列を作っていた。
「うわー。思っていたよりも人が多い」
列を見て紬が驚く。
「コレ、事前予約とか受け付けてなかったの?」
「みたいだよ。店に赴いて待っている間にも購買意欲を掻き立てる作戦じゃない?ホラ」
そう云って前方を見る。
確かに列に居ながら別の商品を手にしている人間がちらほら見受けられる。
目の前のカップルも彼女が彼氏におねだりをしているようだった。
「紬」
「うん?」
手を離す。
直ぐに紬が少し悲しそうに私の顔を見上げた。