第27章 行き着く先は―――
「織田作と行けばうっかり『停止』させてしまうなら未だしも殺してしまう可能性が高い。けれど治が無理なら取引は別のものにして織田作に頼」
「了承すれば良いんでしょ」
「流石、治。話が判るね」
選択肢など初めから無かったのだ。
……判っていたけど。
「じゃあ24日。●●駅前に10時集合ね」
「……はあ。判った」
既に温くなってしまった紅茶を一気に飲み干して立ち上がる。
「!」
飲む気など全く無かったのに。
其れほどに私の中の罪悪感と思われる感情は
私を支配していたのだった。
―――
12月24日―――。
人が増え始める駅前で紬を待っている。
抑も、一緒に来たら良かったのに何故そうしなかったのだろうか。
木枯らしを受けて溜め息をつきながら考える。
ポケットに手を入れているため外気に触れるのは首と顔だけ。
それでも今日は冷え込んでいた。
雪が降るかもしれないという天気予報。
聞きたくなかった。
取引なんかじゃなかったら部屋に引き篭っていたのに。
「はあ。寒い」
そうぼやいた瞬間に。
「!?」
首に何かが巻き付く。
「防寒具を使えば良かったのに」
「……。」
私の首を急速に暖め始めたのは黒のマフラー。
それを掛けた人物はクスクスと苦笑している。
いや、そんなことはさておいてだ。
「待たせて申し訳ないね」
「いや……それよりも……」
声は勿論、待ち合わせを指定した人物だ。
間違いなく。
問題は………
「ああ。変かい?」
「………いや」
その格好だ。
何時もは白のブラウスに黒のズボン。黒のロングコートを羽織っている人物。
其れがどうだ。
「女は化粧と着用している服で変わるらしい。良く判らないけどね」
「……そう」
黒のニットに白地に黄色の花がプリントされたスカート。ベージュのコートにこの間作成していた白のマフラー。
そして別人に見える極めつけが
「にしても、その髪は何」
「地毛でも良かったのだけどね。治より少し長いだけで色も髪質も一緒だから被ってきた」
茶色の弛くウェーブした長い髪に、化粧だ。
「太宰紬には見えないだろう?」
「……まぁ」
「良かった」
私の返答に満足したのか。
紬は嬉しそうに笑った。