第27章 行き着く先は―――
あれから間も無く警察と救急車が到着し、対応に追われた。
尤も。
太宰は何時の間にか妹を連れて忽然と姿を消していたが。
「紬さん大丈夫ですかね?」
「判らん。完全に記憶が刷り変わっていたからな。脳に与える影響が大きくて眠ったのではないかと思うが……」
「にしても、仲が悪い様に仕向けても結局は今のように仲良しになるんですね」
「アイツ等の仲など性格と同じで産まれてくるところからやり直さない限り変えられんと云うことだな」
国木田の頭に痛みが走った。
「まあ、仲の悪い太宰さんたちが探偵社に居たらきっと周りが大変ですよね」
敦の一言。
全員で激しく同意した。
―――
「大丈夫?」
「うん。何か変な夢を見ていた気分だよ」
家に戻って直ぐに紬は目を覚ました。
太宰の代わりに撃たれて眠ってしまったことも、眠りから覚めて女と対峙したこともハッキリと覚えていた。
そんな話を同じ蒲団に入ってする2人。
珍しく衣服を着用したままだ。
それでも兄にぴったりと引っ付いている紬と、其れを嬉しそうにしている兄。
「そう云えば2年前から紬も探偵社に居たらしいのだけど」
「ああ、うん。そう云えばそんな夢だった」
「何で?」
太宰が不思議そうに問う。
「私が織田作と仲良くなかったから」
「ふむ」
それらしいことを先刻も云っていた。
「治との契約で「織田作に手を出さない」事を了承して以来、偶然会わない限りは全然会ってなかった」
「ってことはマフィアを抜ける抜けないの話で喧嘩しなかったってこと?」
「そゆこと」
ニッコリ笑って云う紬。
「因みに何時ぐらいから仲違いが解消し始めたの?」
「うーん。矢っ張り第二次成長期頃かな。見た目が変わったし」
「夢を見てたのに曖昧な返答だね」
「私は治の事、嫌ってなかったから」
「え?」
「恐らく私の記憶を操作するのに私以外の人間関係しか変えられなかったのではないかな」
「成る程……一理あるね。始めから変えたいように認識を改められるならそうしているってことか」
「今思えばだけどね」
ふふっと笑って兄にすり寄る。
「甘えるね」
「矢張り4年は長過ぎたのだよ」
抱き締めながら額に口付けを落とす太宰。