第27章 行き着く先は―――
「何故、君が此処に?」
紬を抱えて太宰が芥川に問う。
国木田は救急車を呼び、女の手当てを始めた。
「その女は我々が飼っていた狗にも為れない捨て駒」
ジロリと女を一瞥する。
「芥川先輩!」
少し遅れて樋口がやって来る。
手に包帯。
珍しく怪我をして居るらしい。
それを見て小さく「そう云うことか」と呟く太宰。
「彼女のせいで内部で争いでもあったのかな?」
「!?」
樋口が太宰の言葉に驚き、芥川はフッと笑った。
「下級構成員の記憶を操作し、内部抗争を勃発させる事で有名な賊。他の小規模組織だけに留まれば善かったものの我々ポートマフィアにまで手を出した」
「それで返り討ちに遭い、最期のチャンスとして我々のどちらかを始末するように指示したって訳か」
「然り。太宰さんは片方さえ始末出来れば充分だから」
「成る程ねぇ。道理で見知らぬ女が私達の事を知っていた訳だ」
女を一瞥する。
国木田が百凡手当てを試みているが太宰は助からないと判っていた。
確実に貫いた心臓。
芥川の攻撃のキレが増している。
「糞っ!脈がっ!」
「紬の終焉想歌ならば止血も、この危険な状態さえも停止しておくことも出来たのにね」
「!?」
太宰の一言でハッとした。
最初からこうなることが判っていて紬の方を狙うように仕向けていたのだろう。
「矢張り太宰さんには敵わぬ」
そう云うと芥川は踵を返した。
遠くからサイレンの音が此方側に近付いてくるのが判る。
「行くぞ樋口」
「はいっ」
探偵社組は追いかけることなく2人を見送った――。