第27章 行き着く先は―――
「なっ……何よ!」
女が視線に怯える。
一般常識など備わっていないと云っていた国木田の言葉だけが脳裏を過った。
そして、次の言葉でその事を痛感することになる。
「「うん。今でも毎日」」
「……。」
仲が悪くなった筈の紬までもが一緒に答える。
「何?紬は私と添い遂げているの?」
「当たり前だろう?私は治を誰かに渡す気など微塵もないよ?」
「そっかー。なら記憶の齟齬なんて如何でも良いや」
ニコニコしながら抱き締める腕に力を込める。
それに対して嬉しそうに笑う紬。
女が焦る。
何かを考え、そして浮かんだのか。
「それで良いわけ!?目の前に居るのはお互い、違う兄妹じゃない!」
「「!」」
太宰兄妹の視線がまたしても集まる。
しかし、今度は怯まない。
「今まで喧嘩していて、やっと仲良くなった兄じゃないのよ?」
「……。」
「貴方もよ!今までずっとベッタリ仲の良かった妹じゃないの!理解できてる!?姿形が同じだけで中身は別人なのよ!」
「……。」
太宰兄妹が目を合わせる。
良し。騙せるかもしれない!
「お互いの思い人に会いたいなら殺し合うしかないの!」
云い切った。
しかし、兄の反応は薄い。
紬に至っては少し不機嫌だ。
「そんなに私に治を殺して欲しいのか」
「そうよ!でないと私はっ……!」
「―――真逆、治の女に為りたいのかい?」
殺気。
それは石になっていた国木田すら元に戻せるものだった。
「どどどどっ……!どうしてそうなるのよっ!?」
「私が治に嫌われるように仕向けているのだろう?」
鋭い視線に射抜かれて怯える女。
コホコホ…
「そんな訳なっ………!」
言い返そうとした時だった。
「「「!」」」
女の胸部を黒いものが貫く。
「う…ぁ…っ」
どさり。
自分の血で作った血溜まりに倒れ込んだ。
「なっ……芥川っ!?」
「っ!?」
「紬!?」
現れた人物に驚く国木田と、
突然、頭を押さえて倒れ込んだ紬を慌てて抱える太宰。
「紬!」
「……恐らく眠っているだけですよ」
芥川が云うと太宰が紬を確認する。
確かに、先程と変わらないが。