第27章 行き着く先は―――
『太宰治と太宰紬。この2人が本当に仲が悪ければお互いの存在が邪魔だから消し合う筈だ』
とある組織の首領が云った言葉が女の脳内に反芻する。
失敗すれば私が殺されると云うのに―――!
「私と治が仲が悪かったのは間違いないけどもう7年程、喧嘩したりしてないよ」
「!?」
女の顔が一気に青褪める。
「仲が悪かったの?」
紬に訊ねる太宰。
「うん。恐らく『退屈な人生を退屈そうに過ごす自分』を観てる様だという理由で治が嫌っていたから」
「成る程ね」
『若し、紬の事が嫌いならば』と云う前提で考えれば理解も想像も出来る。
其れほどにそっくりだった。
「そんなに似ていたのか?」
まあ、今も似ているが。と国木田が問う。
「うん。最初は紬も男だと思われている程にそっくりだったのだよ」
「……。」
太宰の言葉に納得する国木田。
代わりに紬が何か考え込む。
「それでも治と『私』は仲良かったのかい?」
「うん。幼少の頃は特にね」
「そうか……羨ましいな」
紬が太宰に抱き着く。
其れが可愛いと思ったのだろう。太宰が嬉しそうに紬の頭を撫でる。
「最期に喧嘩したのは何時?」
「15歳頃かな」
「原因は?」
「織田作と付き合うって云ったから」
「……。」
そりゃ怒るだろう。
若し、紬がそんなことを云った日には織田作にすら手を掛けて……は無理だろうけど百凡手段を用いて遠ざける位はしたかも知れない。
「好きだったの?織田作」
「全然」
「え」
「ただ、治が絶対に殺せない且つ、嫌がらせに最適な人物が織田作だっただけ」
「……。」
どれだけ歪んだ性格をお互いしていたのだろうか。
否、歪んでいるのは今も一緒だけど。
あ、国木田君が石に為りかけている。
「あの頃、私は治と仲良くしたかった」
「……でも怒っただろう?私は」
「そりゃあもう。その夜、処女を奪われた」
「ああ、そう。矢っ張ね」
容易に想像がつく。
国木田君は完全に石になった。
「ちょっ…兄妹でセックスまでしたことがあるわけ!?」
存在が薄れていた女が口を挟んだ。
ああ、居たの。
そう言わんばかりに太宰兄妹が視線を寄越す。