第27章 行き着く先は―――
「んっ……」
大人しく兄の行為を受け入れる紬。
「ちょっとーーー!何でさっさと殺し合わないわけーーー!?」
何処から見ていたのか。
紬に異能を掛けた女がすごい形相で現れる。
女の方を見たのは国木田だけ。
太宰兄妹は反応することなく2人の世界だ。
「抑も、アンタ達、兄妹じゃないのーーー!?」
「無駄だ小娘。この2人に一般常識など備わっていない」
国木田が頭を抱えている。
そんなことは全く関係ないのだが。
漸く太宰が紬を解放する。
「如何したんだい?見物客が居ると云うのに」
「何時からだい?」
「え?」
紬が太宰の胸に顔を埋めるも顎を持ち上げられて無理矢理、目を合わせられる。
「何時からそんな女性らしく笑うようになった?」
太宰の目に宿るは怒り。
「私に訊かれても困るよ。意識したことなんて無い」
「じゃあ質問を変えよう。そんな顔、『誰に』向けている?」
「どんな顔の事を云っているの?抑も、何に怒ってるのか判らない」
「ああ、そう。ならいいよ」
「っ!?」
2回目の口付け。
今度は口内に舌を侵入させて貪る。
女は顔を手で覆いながら隙間から覗き見し、国木田は外方向いて「俺は何も見ていない」と呪文のように繰り返し呟いた。
「……何を怒ってるの?」
「別に怒ってなど居ないよ。紬は今、何も判っていないのだろうから」
行為を終えて頭を撫でる太宰。
しかし、その顔は険しい。
「と云うことは私は何か異能操作を受けているのか」
「そうだよ。理解が追い付いてきたね」
太宰が紬を抱き締める。
そして、紬の一言で女がハッとした。
「太宰紬!今すぐ太宰治を始末するのよ!!」
女が叫ぶ。
その声に紬は顔だけ向けた。
「私が治を?君は何を云っているんだい?」
呆れたような口調で云う紬。
「貴女こそ何を云っているのよ!貴女と兄は仲が悪いのでしょ!?」
仲が悪い事を隠して演技で近付いて殺すのかもしれないと観ていたのに、そんな気配が微塵もない。
って云うより。
普通に口付けを交わしたりなどしないだろう。