第27章 行き着く先は―――
太宰は横に寝せていた紬を膝に座らせて抱き締め直した。
何故、体制を変えたかと云うと
「全く。お前のその独占欲は如何にかならんのか」
「ならないよ。本当に油断すると直ぐに虫が湧く。国木田君も知ってるでしょ?何処の金持ちか知らないけど『給金を幾らでも出すから紬を秘書に』ってしつこい男が云ってきているのを」
「金持ちかどうかは知らんがこの間の護衛対象の官僚な」
「如何でも良いよ。虫には変わり無い。私の紬を金で買おうなんて」
太宰が紬の顔を隠すように抱き締める。
理由は1つ。
国木田にすら寝顔を見せたくないらしい。
「その体勢だと起きた瞬間に瞬殺されるな」
「善いよ。別に」
太宰がそう云って瞬間だった。
「………ん…」
「「!」」
紬が目を開けた。
「あれ……私は……ん?」
状況が判らないらしい。
周囲を窺って、顔を上げる。
目の前にいるのは恐らく。
『大嫌い』な兄。
「目が醒めたかい?」
「うん。ところで何故、私は野外で。しかも治の膝の上で寝ていたんだい?」
「覚えてないのか」
国木田の眉間に皺が寄る。
そんな国木田を見て紬が首を傾げる。
「ん?国木田君も一緒かい?珍しいね。仕事の鬼の国木田君が何故かは知らないけど私の昼寝に付き合うなんて」
「別にお前の昼寝に付き合っていた訳ではない!」
クスクス笑いながら太宰の膝から立ち上がる。
何時ものように怒鳴りながら突っ込みを入れる。
「紬」
そんな紬に深刻な顔をして太宰が声を掛ける。
「何だい?」
キョトンとした顔で見返す紬。
「……国木田君の事を知っているのかい?」
「!」
太宰の質問に国木田君が驚く。
確かにそうだ。
太宰と仲違いをしているならば抑も、探偵社に入社している筈がない。
二人が紬を注目する。
「何でそんなことを訊くのかは知らないけれど2年も同僚をやっているのだよ?知らない筈がないだろう?」
「「!?」」
満面な笑み。
「2年も……だと?」
国木田が驚く。
「私は何か可笑しな事を云っているのか……」
国木田と話している紬の腕を引っ張って太宰が口付けをした。