第27章 行き着く先は―――
翌日の夕―――。
「おい!紬さんの恋人、交通事故だってよ」
「まじかよ。全然落ち込んでいるように見えなかったけど」
「こんな世界だ。あまり動じないように見せてるだけで内心は傷心かも知れねーぜ?」
「誰か行けよ」
矢っ張な。
そんな噂話の間を掻い潜って、中也は目的の部屋に行く。
コンコンコン
「どうぞ」
返事を聞いて入室する。
「よぉ」
「中也か。如何したんだい?」
「思ったより元気そうだな、おい」
「うん?抑も、何で落ち込んでいると?」
首を傾げて問う紬。
あ、こりゃマジで何とも思ってねーな。
「恋人、死んだんだろ?」
「ああ。知っていたのかい?」
「すげー噂になってるぜ」
椅子に座ると中也にお茶を出す。
「それは知らなかった。他人の色恋に首を突っ込むなんて皆、暇人だね」
ふふっと笑ってお茶を飲む。
「………悪ィ」
「何で中也が謝るんだい?彼を殺したのは私の兄だろう?」
「知ってたのかよ」
「知らないと思ってたの?」
妹の方が一枚上手のようだ。
「この間、美女との心中を邪魔した上に、その女だけ先に他界させた腹癒せだろう」
「………手前も同じことしてたのかよ」
「あはは」
心配して損した。
そう呟きながらお茶を啜る中也。
「言い争う相手が居ないと退屈だからね。まだ死なせる気がなかったのだよ」
「……お前は太宰の事……」
「嫌いじゃないよ?周りが勝手に仲が悪いって云ってるだけで」
「……。」
何がどうなってる?
「見た目が変われば仲良くなれると思ったのだけどね……そう簡単にはいかないようだ」
少し淋しそうに。
それでも笑ったまま呟いた。
「それにね、中也」
「あ?」
コロッと表情を変える。
中也は知っている。
この顔は良からぬ事を企んでいる顔だ――。
「次は絶対に殺せない人と付き合うことにしたんだよ」
満面な笑みで云った。