第27章 行き着く先は―――
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「ほぅ。矢張り和服も良いが洋服も似合う」
「姐さん。私にスカートは似合わないかと」
「何を云う!その辺の女学生にしか見えぬぞ」
「はぁ…そうですかね?」
黒のブラウスにベージュのスカート。
少し肌寒いため薄桃のカーディガンを羽織って髪にはカチューシャ。
既に美容院まで連れていかれており、
肩ほどまである髪は軽くウェーブ。顔は化粧。
何処からどうみても『今時』の女学生の私服姿だ。
「ところで何で私はこのような格好を?」
「太宰に見せつけるためじゃ」
「……辞めてください。鼻で笑われます」
嫌味混じりで罵る兄の姿を完璧に思い浮かべられる程、未来の予想が出来た。
「抑も、気づかないのでは?私の事など露程にも興味が無いだろうし」
「うむ……一理あるな」
紅葉が少し考え込む。
「そうじゃ。その姿で逢引きしてきたらええ」
「誰と?」
「今、交際中の彼と」
「何処からそんな情報が?」
「紬が知らんだけで周りの男は主の事ばかり云っておるぞ?」
「それは知らなかった」
「居るのだろう?恋人」
「まあ『恋人』と云う位置付けの男が一人居ます」
「その言い方じゃ利用する気で近付いたな?」
「流石、姐さん。鋭いですねぇ」
ふふっと笑って答える。
「凄腕のプログラマーなんですよ。その技を少しばかり授かろうと思って」
「成る程のぅ」
ニヤリと笑って納得する紅葉。
「でもまあ、そうですね。何も考えずに過ごすのも偶には良いかもしれません」
「ふふっ。折角、おめかししたからねぇ」
「はい。では一寸ばかり出掛けて来ますよ」
「主に掛ける言葉では無いだろうが気を付けての」
そういうと笑顔で手を振って、二人は別れた。
「ああしていると一般人にしか見えんのう。なあ?中也」
「……そうですね」
何時の間にか。
呼び出されていた中也がぶっきらぼうに返答する。
「なんじゃ?折角紬の愛らしい姿を見せてやろうと思って呼んでやったのに」
「お気遣い感謝します」
「……太宰と揉めたのかえ?」
「……まあ」
短く答えると車のドアを開けてやる中也。
「あんなに笑っていたところ悪いが…」
「如何かしたのかえ?」
「紬の男、死にますよ」
ため息混じりで云った。