• テキストサイズ

【文スト】対黒

第27章 行き着く先は―――


―――

私がマフィアになって数年の時が過ぎた。


首領交代もあり、私は幹部にまで昇進した。


五つしかない幹部席。


「紬。今日は暇かえ?一寸外出に付き合わぬか?」

「おや。姐さんからのお誘いなんて珍しい。喜んでお供させて頂きますよ」


勿論、彼女……太宰紬も座っている。


「太宰も行くかえ?」

「いえ。私は少々することがあるのでまた次の機会にでも」

ニッコリ笑って先に退室した。


「其方の兄はつれないの」

「済みません。私の事が嫌いなのですよ」

「まあ主たちの仲の悪さは有名だからねぇ」

苦笑しながら返す紬に姐さん、こと尾崎紅葉が理由を訊ねる。


「さあ?何なんでしょうね」

「知らんのかえ?」

「はい。私は特にそうでもないから。なので強いて挙げれば『自分を見ているようだから』かもしれませんね」

「成る程のぅ……」

紬の返答に何か考える紅葉。


そしてニッコリ笑った。


「………姐さん。何か良からぬ事を思い付きましたね?」

「ふふっ中りじゃ。行くぞ」


紅葉達も会議室を後にした。


―――

「何だあ?その不機嫌極まりねぇ顔は」

「不機嫌?不愉快極まりない顔はしている積もりだけど」

「然して変わりゃしねーだろうが」


私に話し掛けてきたのはこの世で二番目に嫌いな人間。


帽子置き場こと、中原中也だ。

「おい手前、いま失礼なこと思っただろう」

「真逆!中也に対する失礼なことなどこの世にあるなら教えて欲しいくらいだよ」

「手ッ前ェ………」


廊下の真ん中。

そんなやり取りをしていると、黒尽く目の男たち数人が私の方へ歩いてきている。

「あ?何だよ」


中也がその方向を向く。

が、別にそいつらに用事があるわけではない。


「いや、姐さんと一緒に何処か行くみたいだったなあ!」

「ああ。見れてラッキーだったぜ」

「何時見ても綺麗だよなー」

「にしても急に女性らしくなったよな」

「ホントホント。俺、ずっと男だと思ってたし」

「俺も……っ!太宰幹部!」


前方に居た私に気付き、会釈して足早に去る。

先程と全く同じ光景。


同じ内容の会話―――。


「紬の事か」

「さぁ?」


適当に返事して歩き出す。
/ 449ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp