第1章 再会
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「ったく。あの自殺マニアめ!少し目を離すと直ぐに居なくなりやがって……。」
ブツブツ云いながら書類を作成している国木田。
「国木田さん。」
「何だ?」
そんな不機嫌オーラバリバリな国木田に谷崎の妹、ナオミが話し掛ける。
「依頼の方がみえられました。」
「いやー。武装探偵社というからもっと堅苦しい雰囲気を想像していたのですが。」
「そうですか。」
国木田は目の前に座る女性を見る。
弛くウェーブした肩ほどまで有るだろう黒い髪を1つに束ね、ベージュ色のコートを羽織っている。
白のブラウスに七分丈の黒のパンツ。
何だ?何処かで見たような―――?
「それで?ご用件は?」
「あ、2件あるんですよ。1つ目は求人してないかと思いまして。」
「……。」
「いや、何。求職活動中なのですが中々思うような職場が見当たらなくて。あ、事務職が良いのですがね?此処なら仕事も豊富で人手不足なのではないかと思い―……。」
「生憎だが、求人はしていない。他を当たってくれ。」
「そうですか。」
国木田の素っ気ない対応にも、笑顔のまま返事をする。元より断られること前提の様だった。
「二つ目は?」
「人捜しを。」
「………。」
サラリと言った依頼を黙ってきく国木田。表情はかなり険しい。
「この通り、また職を得ることが出来なかったので生活に困ってまして。この街に居る兄を捜しに来たのです。」
「あのですね!」
「はい?」
「ウチは主に裏と表の境界の依頼を請け負う探偵社なんですよ。人探しなら他所を当たって下さい。」
「その兄が危険人物だとしても?」
「!」
ピクリッ
国木田が僅かに反応する。
「……。」
「……。」
静寂が訪れる。
はぁ。
「…特長は?」
先に折れたのは国木田だった。
「あ、聞いていただけるんです?有難うございます。」
お礼をいい、続ける女性。
「特長は、私と同じように唸った黒髪に、身体に包帯を巻いていて、」
「……ん?」
激しく心当たりがある。
「砂色のコートを羽織っている、趣味が『自殺』なんていう危険人物なんですよ。ってどうしました?」
急に立ち上がる国木田。
「…名前は?貴女のも。」
「ああ。未だ名乗っていなかったですね。私の名前は―」
その名前を聞いた瞬間、国木田は目眩で倒れかけた。