第26章 影は常に付き纏うもの故に
「ポートマフィアの管理下にあった場所に『楽園』を横流しされた噂の後に、接触してきた組織を調べたのだよ」
「如何やって。抑も、何でヤクを横流しされた事知ってたの?」
「云ってなかったっけ?」
「聞いてない」
「この間、銀ちゃんに会ってねー」
銀ちゃん。
芥川くんの妹だ。
にしても、何故―――
「何でも治に刃物を向けたらしいじゃあないか」
「……。」
『会った』んじゃなくて『会いに行った』の間違いだね……………うん。
何で知ってるの?などと訊いたらば頭を抱えたくなりそうだから止めておこう。
「それで良いネタがあるって快く教えてくれたのだよ」
「そう」
「その時に序でに何をしに行くのか訊いたら、最近になってから頻繁に取引を申し出る『蠍』と云う連中の視察って云っていたのを思い出してね」
「調べたら○○とも繋がりがあったと」
「そゆこと。あとは尻尾を掴むまで警戒して動いたのに」
紬が溜め息を着く。
「何かあったの?」
「いや。連中は大概の馬鹿だと云うことが判ってね」
「ふーん」
「○○が今期の異動の決定会議で自分に都合の良い人間を都合の良いポジションに置こうと企てることが想像できていたからね。『蠍』を使って邪魔者を消しに来ることが判っていた」
「国木田君が行く筈だった案件か」
会議の前から不穏な気配を感じるとして依頼があった件。
この時点で紬は情報収集に入っていたのか。
「代わりに紬が行ったの?護衛」
「うん。確信を得るには丁度良いと思ってね」
「そう」
その護衛対象。●●とか云ったっけ。未だ若いキャリア組。
………紬を欲しいと云わなきゃ良いけど。
「その判断は正しかったのだよ。○○は『蠍』の他に『鬼蜘蛛』とも関係を持っていた」
「只の官僚が鬼蜘蛛を知ってるなんてねぇ」
「いや、偶然だとも。●●が用を済ませて手を洗おうとした時に会議の会場に何故か来ていた○○の付き人が先客だったらしいのだけどね」
「ああ……蜘蛛の刺青を偶々目にしてしまったのだね」
私の答えに紬がコクッと頷く。
『鬼蜘蛛』の構成員は忠誠の証として手の甲に蜘蛛の刺青を入れる習わしになっているのだ。