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【文スト】対黒

第26章 影は常に付き纏うもの故に



「それで?」

「ん?」


食事を終えて再び横になる。

勿論、腕の中に紬を閉じ込めている。

「如何してこんなに甘えるのか」

「ああ……」

頭を撫でて、目を閉じる。


「紬が居なくなった日の夢を観た」

「それで、か」

見らずとも苦笑しているのが判る。


「訊いたら怒るかもしれないけど訊いていい?」

「中也に会いに行った件なら取引しに行っただけだよ」

「……。」

完全に読まれている。

「治が私に心配掛けたりするからだろう?反省し給え」

「うん」

目を開けると未だ苦笑しながら私を見ている紬と目が合った。

「まぁ手段を選ばなければこんなに苦労することは無かったのだけどねぇ」

「それでも関わっていた連中を皆殺しにしたのだろう?」

ピクッ

紬が小さく反応する。

「もうバレてるの?」

「バレてるよ。他の人間ならいざ知らず」

やれやれ。

「治を貶めた組織など滅びればいい」

「もう心配掛けたりしないよう努力するよ」

未だご立腹ではあるようだ。
紬の頭を撫でてやると笑顔に戻った。

「それで中也と何を取引したの?」

「先日の軟派男の所属先と、治が拘束されていそうな場所の情報を交換した」

「……あの男がポートマフィアの前に居た組織か」

「興味ある?」

「全く。でも聞く」

「あの日、温泉を先に上がったから良かった。あの男の気配がして治達の服を隠しに行っただろう?」

「うん」

「その時に男の首に『蠍』の付いたネックレスがあった」

「……『蠍』だったのか。紬が中也を頼った理由が判ったよ」

「其れは良かった」

ニコッと笑う紬。


『蠍』は彼方此方に散らばっており、明確な『拠点』を持っていない事で有名な組織だ。
故に、構成員を『蠍』の所属だと特定することが難しい。

間違えて攻撃を仕掛ければ、表の公的組織……市警や軍警と一戦交えることになる。


そんな『蠍』達が唯一、仲間を見分ける方法として用いているのが蠍型の『通信機』の所持だ
その『通信機』は独自の電波を発しており、近付ければ反応する仕掛けになっているらしい。


要は、『蠍』達以外に『蠍』と判別するのは無理なのだ。
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