• テキストサイズ

【文スト】対黒

第3章 人生万事塞翁が虎


「おい太宰。俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ。」

国木田は早く仕事に戻りたいようだ。

「お三方は……何の仕事を?」

「なァに 探偵さ。」

太宰がキリッとした顔で云う。

「………。」

その言葉を信じられないのか。
ポカンと口を開けて国木田を見ている敦。その状況に国木田が舌打ちする。

「探偵と云っても猫探しや不貞調査ではない。斬った張ったの荒事が領分だ。」

そういうと正面の国木田達から、隣に座っている紬に視線を移す。

「……貴女も?」

「そうだね。」

ニッコリ笑って質問に答える紬。国木田が続ける。

「異能力集団『武装探偵社』を知らんか?」


『武装探偵社』 聞き覚えがあった。

曰く 軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団――昼の世界と夜の世界 その間を取り仕切る薄暮の武装集団

なんでも『武装探偵社』の社員は多くが異能の力を持つ『能力者』と聞くが―――


そんなことを考えながら3人を見やる敦。

その時、何かに気付いたのか。

太宰兄妹の視線が上昇し、

「「あの鴨居頑丈そうだね……たとえるなら人間一人の体重に耐えられそうな位。」」

同時に口を開く。

ピキッ 本日何度目か判らない青筋が国木田の額にに現れる。

「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな」

「違うよ 首吊り健康法だよ 知らない?」

「何。あれ健康にいいのか?」

「まず頑丈なネクタイを用意しましょう」

太宰の説明を手帳にメモし始める国木田。

『本当かなあ………。』

その光景を正しい判断で観ている敦は心で疑問を浮かべており、打ち合わせもなく同じタイミングで言い出した女性の方をチラリと見る。

「ふふっ。君は聡明だね。」

「……。」

矢張り、嘘のようだ。

「そ……それで探偵のお三方の今日のお仕事は」

敦の質問に国木田が舞い戻る。

「虎探し、だ。」

「………虎探し?」

「近頃 街を荒らしている『人食い虎』だよ。倉庫を荒らしたり畑の作物を食ったり好き放題さ。」

口元に手を当てて太宰が説明する。

「最近この近くで目撃されたらしいのだけど――」

ガタッ

敦が座っていた椅子からずり落ちる。

そして

「ぼ ぼぼ 僕はこれで失礼します。」


床を這うように去って行った。
/ 449ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp