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【文スト】対黒

第26章 影は常に付き纏うもの故に


―――

「大丈夫か?太宰……」

「……んー?あれ?お花畑はー?」

「大丈夫じゃないな」

頭からの出血は治まったようだが。

国木田は太宰の傷を見て顔をしかめる。


何の情報を得ることも出来ずに帰社している途中に襲われ、此の部屋に閉じ込められている。


脚には枷があるものの手は自由が利き、トイレと洗面台はある部屋。
その上、簡素な食事まで出てくる。


『大人しくしておかなければ次は他の連中を連れてくる』


その一言で大人しくしているのだが。

太宰は鉄パイプで殴られた上、髪を切られた。


「くそっ……手帳さえ盗られなければ…」

「まあまあ。そんなに嘆かなくても大丈夫だよ」


自分より酷い怪我を負った太宰は暖気に欠伸をして云う。

いや、血が足りずに居るのかもしれない。


それほどに出血が酷かったのだ。

「何が大丈夫なんだ。鏡が在るなら見せてやりたい程、貴様は死に掛けてるぞ」

「おー。先刻の迎えは本物だったのかー着いていけば良かったなあー国木田君が邪魔したから」

「紬は良いのか?」

ピクッ

「良くないよ」

太宰の顔が一変する。

「ならば大人しくしていろ。洒落にならない程に顔色が悪い」

「血が足りてないのだろうね。意識がもっていかれそうだ」

ふふっと笑って壁に寄り掛かる太宰。


「国木田君の口から紬の事を心配する内容が出る度に嫉妬にかられるのだけど」

「何でだ。大体、貴様はもう少し第3者に配慮した交際って云うものが出来ないのか!?」

「出来ないよ。隙を見せたら直ぐに虫が湧く」

やれやれと太宰が溜め息を着く。


「私も非道に成れれば良いのだけどね。紬が絡むと如何しても躊躇する事が多い」

「嫉妬にかられて孕ませようとしたのは非道に入らないのか」

「あら。そんなことまで聞いてたの」

困った妹だと笑いながら云う。


「聞いたんじゃない。聴こえたんだ」

「然して変わりはしないよ。紬の事だ。態と云ったのだから」

「なんなんだ、お前達兄妹は……」


国木田が頭を抱える。


「私は紬が他の男のところに行くと云ったら止められる自信が無かったのだよ」

「はあ?此れだけ束縛しておいてか?」

「うん」

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