第26章 影は常に付き纏うもの故に
予言まですると云うことは既に動いていると云うこと。
「鬼蜘蛛の幹部に、先刻行われた中也との取引話をリークした」
「!」
矢張り。
下ろした髪の下。
髪で隠れた耳には何やら機械が填められている。
ホント。何にも変わってねーな、コイツ。
呆れて言葉を失っていると中也の携帯電話が鳴る。
「お。もう分かった?」
「ああ。送ってやる」
「ふふっ。気が利くねぇー有難う」
時刻は既に2時を回っていた。
「そろそろ大切な人の一部も各所に届く事だろうし、事態も終息に向かう頃だね」
「あ?そんな嫌がらせまで手配してきたのかよ」
「当たり前だろう?」
「お前、本当に『武装探偵社』の社員かよ」
「うふふ。私は今、休暇中だ」
「は?」
「休暇の時間に昨日の17時から明後日の17時と記載してきた。詰まり、今の時間帯は探偵社の社員はお休み中だよ」
「とんだ屁理屈だな」
「何とでも云えば良いよ。私はこの世に於いて治以外如何でも良いから」
そう云うと車を降りて去って行ったのだった―――。
蠍の幹部にぶつかって、盗聴器を仕込み、其れを持って鬼蜘蛛の幹部に接触する。
後は言葉巧みに操ったのだろう。
「蠍と鬼蜘蛛。両方消えるし俺達がすることは何もねぇーし、まあ、良いか」
愛車のエンジンを起こす。
そして中也もその場を去って行ったのだった。