第26章 影は常に付き纏うもの故に
「そう。『楽園』ならば直ぐに娼婦が出来上がる」
欠伸をしながら答える。
「そして、あの『裏ルート』を使って娼婦を作り始めた」
「しかし、今の手前の話なら野郎が『鬼蜘蛛』でも可笑しくないだろう。何故、『蠍』だと気付いた?」
「それはつい先刻ね。あの取引現場に現れる前に序でに色々調べてきたのだよ」
「……本当に抜かりねぇのな」
「ふふっ。それで面白いものを見付けてねぇー」
ピラリと取り出すのは一枚の紙。
それを中也に見せる。
「……。」
黙って読み始める中也。
「先ず、ポートマフィアから『楽園』を取引で買い取り、良い商売客だと云うことを主張する。で、その頃には簡単に娼婦を造れることを覚えた鬼蜘蛛達が『楽園』を必死で求めているという状況まで持っていっておく」
「それで、俺達と『正規に取引した楽園』を鬼蜘蛛の隠れ家に仕込み、『先日盗まれた楽園』ではないかと云う情報を流してポートマフィアに鬼蜘蛛を潰させる、か。中々、良く出来たシナリオじゃねーか」
鼻で笑うとその紙をポケットに仕舞う。
「そのシナリオ通りに動いていたあの男は鬼蜘蛛だと未だ云うかい?」
「ハイハイ。俺が悪かった」
中也が降参すると満足そうに笑う。
「俺達を遣おうなんざ100年早ぇーことを教えてやらねーとなあ」
中也が獰猛な笑みを浮かべる。
「残念だけど中也」
「あ?なんだよ」
「それは叶わないよ」
「……。」
紬が中也の殺る気を削ぐ。
「あの店は最後の客が帰宅するのと同時に店仕舞いだよ。あくまで予言だけど」
「……。」
矢張り、紬の報復が此処で終わりの筈がなかったのだ。