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【文スト】対黒

第26章 影は常に付き纏うもの故に


ドサッ


「「!」」


体格の良い男が、開けた扉から部屋に倒れ込む。

そして

「そんな大事な商談中だったのか。申し訳無いね」

「なっ!?」

その倒れた男を躊躇う事無く踏みつけながら入室してきたのは女だ。


倒れている男など、比べ物にならないくらいの華奢な女。


「何分、私も急いでいるものでね」


ヘラッと笑ってソファを見た女。


「おや。先客って中也のことだったのか」

「手前の神出鬼没振りは如何にかならねぇのかよ」


チッと舌打ちして外方向く。
そうしながらも少しずれて紬が座るスペースを空けてやる。

「ふふっ有難うー中也」

「……珍しく気が立ってるじゃねーか」

「判る?社長以外は気付かなかったのだけど」

「そうかよ」

2人のやり取りをポカンとした顔で観ている男。


「まあ、座り給えよ」

笑顔で男に促す紬。
その顔を見て何かを思う男。

「……何処かで……」

結論が、中々出ない。

「昼間、立て籠り事件の起きていたコーヒー店の傍でぶつかっただろう?」

「!?」

あの時、ぶつかったスーツ姿の女性。

噛み合わなかった思考が漸く繋がる。


「そんなに前から此の男に目を付けてたのかよ」

「!?」

「ふふっ。まーね」

「!?」

中也の一言で男が青褪める。

紬が態とぶつかっていた事を。


「何故……」

「『蠍』」

「!?」

男が大きく反応する。

開いている胸元に下がっているネックレス。
『蠍』の形をした飾りが付いたものだ。


「○○氏と繋がりがある非合法組織の1つ。先日ポートマフィアから買った薬中の女が○○の娘であった事が発覚。更に薬漬けにし、言葉巧みに『武装探偵社』のせいにすることに成功」

「……。」

「違うかい?」

笑顔で問うと男がフッと笑う。


「私が『蠍』の幹部で、○○氏と繋がりがあるのは認めますよ。しかし、後半は間違いだらけだ。あの娘が『太宰治』という男に孕ませて欲しいと言い出したのだよ?」

「……手前が怒ってる原因はコレか?」

「そうだけど違う」

「何だ。君がその男の本当の女か?それで態々、こんな危険な所まで?健気だねー」

「そうだけど違う」

2人の質問を肯定しながらも否定する紬。


「君達が我々、探偵社員を拉致しているのだろう?」
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