第26章 影は常に付き纏うもの故に
そして、1分も掛からずに素早く去る敦。
「なんだったんだ!?今の虎は!」
野次馬も含めて、警察官達にも動揺が走る。
「ふぅ」
「おかえりなさい」
敦が心底、疲れきった顔をして戻ってくる。
「……今の虎、お前か?」
「……秘密です」
気まずい空気が流れた。
ザワッ!
「「!?」」
警察官が一瞬でざわめく。
犯人の男が急に倒れ込んだのだ。
そして、急に現れた男の手によって扉が解放されて人質が逃げ出す。
「何だ……!?何が起きた!?」
「今の一瞬で紬さんが犯人を取り抑えたんですよ、きっと」
敦達が苦笑しながら答える。
それと同時に犯人を拘束しながら紬が店から出てきたのだった。
―――
「私はコーヒーを飲みに来ただけで仕事をしに来た訳じゃないのだけどねえ」
犯人を引き渡して帰社すべく歩く4人。
先程の店の飲み物を手に持っている。
「にしても紬さん、本当に凄いですね」
「何がだい?」
コーヒーを啜りながら敦の方を見る。
「警察の方があんなに手子摺って居たのに一瞬で解決するんですから」
うんうん、と谷崎と鏡花も同意する。
「私の力じゃないだろう?敦君が注意を引き、谷崎君の『細雪』で目眩まし出来たからこそだよ。私が頑張った事なんか裏口の鍵開けくらいさ」
ヘラッと笑って紬が云った。
探偵社の建物前。
「うわっ!」
「すんません!急いでいるもんで!」
丁度、建物から出てきた人と敦がぶつかりそうになる。
「運送屋か」
谷崎がバイクに乗って去っていった男を見て呟く。
「最近の若い子は耳に大きいピアスを嵌めるのが流行りなのかい?先刻の立て籠り犯といい、今の運送屋といい似たようなピアスをしていたよ」
「如何なんですかねぇ?」
「判んない」
敦達が首を傾げる。
そうして事務所の前に着く4人。
「?何だろう」
扉を開ける前から騒がしさが響いている。
「ただいま帰りました」
「!敦!紬達も一緒だッたのかい!」
「如何したんです?」
騒然としている中心に行く4人。
その傍で少し青くなっているナオミに気づいて谷崎が介抱する。
「これが………送られてきて………」
「「!?」」
ナオミが指す先にあるのは20糎四方の箱。