第26章 影は常に付き纏うもの故に
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●●を送り届けて、防犯のしっかりした部屋の中。
「紬さん遅いなぁ……」
その扉の前で谷崎は中に居る紬を待っていた。
『一寸だけ、伺いたい事があるのだけど』
紬が●●に云うと部屋に通してくれた。
様々な予定で空いた時間など殆ど無いに等しい程、多忙にも拘わらず紬のために時間を費やしてくれているのだ。
まあ、1日であんなに救われれば当然ですよね
そんなことを思いながら腕時計を見る。
時刻は午後3時に差し掛かろうとしている。
この部屋に2人が入室したのは50分過ぎ。
2、3分と云っていたが既に5分は経っていることになる。
「犯人の想定でもしてるのかな」
ガチャッ
「待たせたねー」
「いえ」
呟いた瞬間に部屋から出てくる紬。
「それじゃあ帰ろうか」
「はい」
歩き出した紬に付いていく谷崎。
「此れから●●さんは大丈夫何ですかね?」
「まあ、警備員に不穏分子が紛れていたとなって、警備が厳重になったみたいだからね」
「云われてみれば確かに……」
来たときよりも張りつめた空気。
「後は市警の仕事だ。我々の関与するところではないよ」
「そうですね」
ふふっと笑顔で云う紬に谷崎も釣られて笑った。
「そう云えば何を話していたんです?」
「ん?○○氏についてだよ。知り合いじゃないかなと思ってね」
「!」
谷崎が目を見開く。
そうだ。
我々にも解決しなければならない問題があるのだ。
「如何でしたか?」
「なんと会議に来ていたらしいよ、彼」
「えェ!?」
「まあ、第一印象を云えば最悪だったらしい」
「そうですか……」
クスクス笑いながら歩いていく。
「谷崎君。コーヒーでも飲んで帰ろう?」
「あ、はい」
紬が指差したのは全国チェーンで有名なコーヒー店。
そんな時、
ドンッ!
「おっと」
「!済まない。余所見をしていたもので」
紬が珍しいスーツを纏った青年とぶつかる。
胸元が開いており、首にはネックレス。
「此方こそ申し訳無い」
笑顔で云うと谷崎とコーヒー店の方へ向かった。
「最近の青年ってお洒落ですよね。爽やかに笑う人でしたし」
「そうかい?」