第26章 影は常に付き纏うもの故に
「ふふっ。そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。この手の連中は自分の腕に余程の自信を持っていることと、芋づる式に仲間が捕まらないように単独行動を主とします」
「全然大丈夫の要素が見当たらない…!」
「あ、会話を盗聴などされていないと云いたかっただけですよ」
笑顔で云う紬。
その時、僅かに―――
「って私が云ったら安心するのだろう?君達は」
「!?」
顔が綻んだ助手席の男と運転手を見て、紬が指摘した。
「それは安心しますよ。此れで●●さんがこんな危険な目に遭うことがなくなるんですから」
慌てて助手席の男が返事する。
護衛対象の男、●●の側近だ。運転手も昔から仕えている人間らしい。
「抑も、こんなに相手に行動が読まれていることが可笑しいのだよね」
「!」
確かにそうだ。
幾ら相手もプロとは云え、計9回に及ぶ攻撃の数を考えれば事前から打合せしていたとしか思えない。
「しかも、今日のスケジュールを聞いただけで私が行動を予測出来たとなると『咄嗟に出た行動』など1つも無かったと断言できる」
「何故、貴女がそんなことを云えるんです!?」
「場数が違いすぎます」
声を荒らげる側近。
それにサラリと返事する紬。
まあ、元マフィアの幹部ですもんねぇ等とはとても云えない。
「話を戻しますけど。要は、この前席2人は黒だと云うことですよ」
「何!?」
「「!?」」
紬以外の連中がざわめいた。
「まあ、車中のやり取りは盗聴していた積もりだったのでしょうけどねえ」
ゴソゴソ。
ポケットを漁って出したのは小型の機械。
「何ですか?ソレ」
「ジャミングだよ。小型のね」
「「!?」」
ふふっと笑って谷崎に説明する。
男たちの声が詰まった。
「判ったかい?」
急に低い声で話し掛ける紬。
ビクッと震える男達。
何故か●●まで脅える。
「君達が私を欺こうなんて死んでも無理ということが、ね」
味方で良かったとつくづく思う谷崎だった。