第25章 今思えばあの頃から
「治が催婬剤を持ち歩いているのは知っていた」
「何時の間に見たんだか」
「秘密」
小さく喘ぎながら身体を震わせる紬に興奮する。
「最初は治が私じゃ満足できなくて、他の女に一服盛ってヤってるのかと思っていたのだよ」
ムッ
紬の中に指を挿れる。
「ちょっと待って治っ……!」
水の中なのに濡れていることが判りもう一本追加して挿れ、バラバラに動かす。
「善い機会だ。私が何れだけの思いをしていたのかしっかりと教えてあげるよ」
「うん…」
「!」
アッサリと肯定される。
「……何時も云うけど抵抗しないと駄目だって教えてるでしょ」
「抵抗……して……治っ止めな……」
既に息の荒い紬。
指を抜く。
これ以上は私の理性が先に壊れてしまう。
「本気で嫌がれば流石に止めるよ。でも今までそんなことあるかい?」
「無い……本気で嫌だと思ったことなんか無いから」
「……。」
私の背中に腕を回して抱き着く紬。
恥ずかしいのか。顔も肩に埋めている。
「本気で云ってるの?」
「私が嘘をついたことなんかあるかい?」
「無いけど」
「私が治にされて嫌なことなどこの世にたった1つだけだよ」
そう云うと顔を上げ、触れるだけの口付けをしてくる。
其れを逃がさないように貪った。
名残惜しそうに糸を引く。
「それは、何?」
顔に手を添えて訊ねる。
「『要らない』って棄てられること」
泣きそうな顔をして小さく云う紬。
お互いを想うが故に、告げられず。
告げられないが故に、不安になり。
不安であるが故に、行動が乱暴になり。
乱暴な行動が、思いにすれ違いを生じさせる。
この道筋をずっと辿っていた私達。
その一番はじめの縺れ。
「あの時、ハッキリと告げていたらもう少し早くから紬を独占できたのか」
「私は治以外の人の元へ行った覚えは無いけど」
「この間、中也と寝たんでしょ」
せめてもう少し早ければ回避できただろうに。
「ベッド1つしかなかったから仕方無い」
ん?
「……シてないの?」
「シてないよ?……キスはしたけど」
「は?」
「宿泊料って云われて」
「……。」
それはそれで腹立たしいけど。