第24章 神隠しと云う名の
―――
「未だ怒ってる?」
「ん?」
紬の泊まる部屋のベッド。
情事を終えて紬が兄の様子を窺う。
「本当は怒ったりしてないよ」
「え」
肩を抱いて額に口付けを落とす。
「中也を除外できないことは判りきっている事だからね」
「でも不満そうだった」
「今でも不満だよ」
アッサリ云う。
「でも私を選んだのだろう?」
「ん……」
小さく頷くのをみて微笑む太宰。
「ああ。そうだ。紬にお土産だよ」
「お土産?」
「今日一緒に居られなかったからね」
ポケットから小さい紙袋を取り出す。
「あれ」
見覚えのある包装袋。
「如何かした?」
不思議そうに見る兄に寄り掛かって中身を取り出す。
「甘い笑顔を振り撒くモテ男って治の事だったんだね」
「何のこと?」
ふふっと笑って指でつついた其れは
「秘密」
白い花の描かれた蜻蛉玉。
紛れもなく、紬が欲しかったものだった。
「有難う治」
「如何いたしまして」
口付けをし、再び重なる。
夜が明けるまで2人は何度も求め合った―――。